ワクチン接種進んでも感染拡大「英国」の悩ましさ 「悪夢の再来」は怖いが、制限は緩和する方向

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ロンドンのウオータールー駅構内にある、マスク着用を呼びかけるプラカード(写真:筆者撮影)

「このままでは、ウイルスがワクチンに勝ってしまう可能性がある。数千人規模の死者が出るかもしれない」。イギリスのボリス・ジョンソン首相は、6月14日、官邸の会見でこう述べた。1週間後の21日には新型コロナウイルス感染防止のためのさまざまな行動規制が撤廃されるはずで、首相はこれを「自由の日(フリーダム・デー)」と名付けていたが、急きょ方針変更を迫られた。

大半の成人が少なくとも1回目のワクチンを接種済みのイギリスだが、インドで発見されたコロナの「デルタ株」の感染が今年に入って急速に広がってしまい、政府は苦渋の選択をせざるをえなくなった。接種率がダントツでもウイルスの脅威が消えていないイギリスの様子を伝えてみたい。

成人の80%以上が接種済み

まずは、ワクチン状況だが、昨年12月からワクチン接種が始まり、現在までにファイザー、アストラゼネカ、モデルナ製が使われている。それぞれ2回の接種で1セットになるが、まずは1回目のワクチンをより多くの人に打つ方針が取られた。政府統計によると、7月2日時点で1回目接種者は約4500万人。これは成人人口(18歳以上)の85.7%にあたる。2回目まで終了した人は成人人口の63.4%に上る。

医療関係者の他には高齢者を優先接種させてきたため、筆者の周囲でも高齢者はほぼ全員が2回接種を済ませ、30代以上の友人・知人たちは大部分が1回目を終えている。学生や20代の接種も急ピッチで進んでおり、「1度も接種していない人」を探すのが難しいぐらいだ。

一時は1日の感染者数が5万人を超えていたが、ワクチン効果もあって、今年2月から3月にかけてようやく死者数・感染者数が減り始め、4月中旬からは規制解除が段階的に進んできた。すべての小売店の営業が許され、美容院や戸外での食事が可能なレストランがオープン。5月中旬からは「戸外で」という条件が外され、レストランやパブ内での飲み食いが可能になった。

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