ワクチン接種進んでも感染拡大「英国」の悩ましさ 「悪夢の再来」は怖いが、制限は緩和する方向

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現在は、1つひとつの席を分ける透明なパネルが設置されている。検査を行う看護師の数もずいぶん減っているようだった。診察後に医師に聞いてみると、「コロナ対策で距離を取る必要があり、新たな機械を導入することで人手を最小限にしている」という。

1つひとつの椅子の間に透明なパネルが設置されている(キングストン病院眼科にて、写真:筆者撮影)

感染拡大を止めるための行動規制が義務化される一方で、政府は4月中旬から、複数のスポーツ競技の観客数の制限を緩める、「実証実験」を行っている。

7月11日まで開催中のテニスのウィンブルドン選手権は、実証実験の対象の1つだ。初日は収容人員の上限50%の入場が認められた。10日と11日の決勝戦では1万5000人の収容が可能なセンターコートを満員にする予定だ。入場には、ワクチンの接種証明、検査の陰性結果、過去6カ月以内の感染による抗体保有の証明などが必要になる。

ユーロ2020決勝では6万人の観客を入れる予定

サッカーの欧州選手権(「ユーロ2020」)も実証実験対象で、決勝戦が開催されるロンドンのウェンブリースタジアムでは収容人数9万人の75%にあたる6万人を最大限とする観客を入れる予定だ。

世界保健機関(WHO)ハンス・クルーゲ欧州地域事務局長は、ユーロ2020が「スーパー・スプレッダー」(10人以上の感染拡大の感染源となった人)を生み出すイベントになる危険性を指摘。しかし、イギリス政府は「ユーロの2020決勝戦は最大6万人までの観客入場を許可する」という線を崩していない。

3日、準々決勝戦でイングランドはウクライナに勝利し、7日にはデンマークと準決勝で対決する。12日の決勝戦まで一層の盛り上がりを見せる中、政府の強気の姿勢は変わりそうにない。

イギリスに住む人の目下の大きな関心事は「海外への休暇にはいつ行けるのか」、だ。1回目のワクチンさえも十分に行き渡っていない多くの国からすれば、ぜいたくな悩みかもしれない。

現在、政府は海外渡航に大きな制限を設けている。ほとんどの国が「訪問を控えるべき国」となる「アンバー・リスト」の中に入っており、もし渡航した場合は帰国後に10日間、自主隔離する必要がある。いくつかの国は隔離の必要がない「グリーン・リスト」に入っている。原則、訪問が許されない国は「レッド・リスト」に入る。

次ページ2回の感染拡大の波からイギリス人が学んだこと
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