台湾の中でも継続的にクラスターと感染経路が不明なケースが発生している台北市。台北市では同様に感染が高止まりしている新北市とともに、感染症警戒レベル第3級が発令されている。これは4段階ある警戒レベルのうち上から2番目で、予断を許さない状況だ。
その台北市で、2021年6月4日に行われた記者会見での市長のコメントに注目が集まった。現在、2期目を務める柯市長は、元は台湾大学医学部附属病院の外科医で、台湾におけるECMO(エクモ、人工肺とポンプを用いた体外循環による治療法)の第一人者だった 。だが2014年に政治家に転身し、無所属、政治経験ゼロで台北市長に初当選したという異例の経歴を持つ人物だ。彼の歯に衣(きぬ)着せぬ発言には賛否があり、動向にはつねに注目が集まっている。柯P(コーピー、PはプロフェッサーのP)の愛称でも知られる。
日本からのワクチンが届いた当日、台北市の会見では、当然ながら記者団からワクチンに対する質問が飛んだ。「日本からの124万回分のワクチンで、台湾の問題は解決すると考えるか」という問いに対し、柯市長は、海外製のワクチンの価格自体は非現実的なものではない、台湾に輸入することができれば、この一波を食い止められるのではないかという見解を示した。
「日本政府は民意に従って行動してくれた」
さらに質問は「蔡総統の指示により、頼副総統が日本へ働きかけた結果、ワクチン供与が実現したと報じられているが、柯市長はどう考えるか」という話題にも及んだ。功労者がいったい誰なのか政治的な話題になりつつあるためだ。
これに対し柯市長は、東日本大震災で台湾から巨額の義援金が日本に送られたこと、また自身が日本を訪問した際、台湾への感謝を示す記念碑を訪れたことにも触れ、「台湾と日本の関係は良好だ。特に市民同士は互いにいい感情を持っている。台湾が困難に陥っている今、日本政府は日本国民の民意に沿った決定をしたのではないか。つまりワクチン提供は多くの人のおかげということだ」と、日本政府には民心に反することができない背景があったとし、その背景を作った日台の市民に感謝すべきであるという考えを示した。
「誰か1人の功績ではない。以前、東日本大震災で日本を支援した台湾の市民にも感謝すべきだし、台湾が困っているときに日本は助けてくれた。そう考えると(ワクチン提供の)功労者はとても多い」
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