では、日本から届いたワクチンは、台湾でどう活用されるのだろうか。柯市長は、現段階で感染拡大阻止のためできることは、公衆衛生的手段、すなわち「行動制限を伴う感染対策」と「ワクチン接種」であるとしている。政府が台湾全体での感染拡大状況から判断し、ワクチンを「感染拡大を食い止めるためのツール」として投入すべきであると考えるそうだ。ワクチンの分配は、必ずしも人口によって決めるものではないとした。
現在、台北市では39の提携医院で大規模ワクチン接種を計画している。提携医院で1日あたり4万〜5万回のワクチン接種を目指す。さらにワクチン接種は、12の行政センターの外来診療部でも行われる予定で、それでも接種が完了しない場合は別の大規模接種会場を設置する計画もあるという。その他にも外出が困難な人のために自宅に訪問する「機動接種隊」も設置される見込みだ。
台北市では政府から分配されるワクチンの数量を見てから最も効率的な運用をしたいとしている。
台湾産ワクチンの第3相臨床試験に協力
また質問は台湾産ワクチンにも及ぶ。通常、ワクチンは市販化の前に3段階の臨床試験が行われるが、4日午後までに台湾産ワクチンの第3相臨床試験は感染拡大が続く台北市と新北市の感染者を対象に行われるのではないかという情報が流れ、物議を醸したのだ。 真偽を確かめるべく記者団からは「台湾が人体実験の会場になるのではないか」という質問も飛び出した。
柯市長は「臨床試験の原則に照らし合わせ、市民の安全を確保するという前提の下であれば台北市は行政として協力をする可能性がある」と述べるにとどまり、専門的なことは専門家に任せると強調した。
中央指揮センターの発表によると、台湾における6月4日の感染者数は474人、うち台北市での感染者数は152人だ。台北市は医療崩壊に陥るのではないかと注視されている。
柯市長は、台北市の療養ホテルにはまだ空きがあり、ベッド数は十分であると表明している。施設の効率よい使用のために、台北市では管轄内にある複数の集中検疫所(集中隔離施設)のベッド数を一旦、中央検疫所に集約させ、同じく感染拡大が続く新北市と共同で利用できるよう調整が行われるという。これにより簡易検査、もしくはPCR検査で陽性がでた新北市の市民を、台北市内の施設で受け入れる可能性が出てきた。
中央検疫所に隔離された感染者は、病状の変化により治療の必要性が生じた場合、台北市の「区域連携予防」という考えにのっとり、提携関係にある台北医院に搬送されることになるだろう。その際の手続きは台北市が支援する。
「台北市と新北市の医療資源をつなぎ、調整することで柔軟な体制をとっていきたい」。感染拡大を抑えるためには、国や地域を越えた連携が求められるのかもしれない。
(台湾『今周刊』2021年6月4日)
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