「ワタミがブラックとは全然思っていない」 桑原社長が語る、ワタミの進むべき道(前編)
その中で、ワタミは多業態戦略を取っていこうと。去年1年間で見ると、居酒屋パブ、ビアホールというカテゴリーの既存店売上高は前年比96%ぐらい。総合居酒屋はもっと低くなる。ところが、専門性を持った業態は前年比100%を超えている。昔のように同一チェーンで100店というロットをお客様は必要としていないと考え、大きく舵を切った。
60店の閉鎖を3月に発表したが、あくまで労働条件の改善に重きを置いた。不振店の撤退ではない。今回閉める60店のうち、営業キャッシュフローで赤字になっているのは10数店だけ。他方、昨年2月ごろからアルバイトの採用が厳しくなってきた。となると、緊急性を持って1店舗当たりの人数を増やさなくてはならない。60店閉めると、残った店に100人以上の社員が異動できる。そこで60店を閉鎖させてもらった。
その一方で、2~3月の段階で中華と炉端焼きのお店を出した。炉端はワタミにとって初めて客単価が4000円を超える高級業態。中華は未経験の分野だが、この2業態は順調に客数が伸びている。
これらも含めて、既存のTGIフライデーズ、GOHAN、炭旬といった専門業態を今期は積極的に出店していく。
結果として和民が転換できればいいし、転換できなければ、そのエリアの立地のいいところに専門店を出して、そこにある和民をクローズしてもいいと思っている。2017年度に全体の店舗数を和民業態6割、残り4割を専門性の高い業態にチェンジできれば、仮説に基づいた結果に結びつくだろう。
ボリュームゾーンは捨てていない
――ここまでイメージが悪化した和民、わたみん家のブランドは捨てるという考え方もあるのでは?
そんなことをするのは大きな間違い。なぜ将来6割も残すのかというと、どの時代になってもマーケットのボリュームゾーンはあるからだ。そのゾーンは、ポピュラーで安心できて、いいものが安く食べられるお店。これはどの時代も変わらない。労働人口が減っていっても、ボリュームゾーンは絶対になくならない。決して捨てたわけではない。