2030年、老人も自治体も"尊厳死"しかない 湯浅誠×やまもといちろう リベラル対談(後編)

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湯浅:はい。政策や制度に(魂)を込めるようなことが、コミュニティーづくりには必要だと思っています。それがないと、捨てざるを得ない地域が出るといっても、現実には捨てられないでしょう? そうなれば結果的に中途半端に終わって、そのことにまた苛立つ人が出てきて、堂々巡りですよ。

やまもと:そうですね。ただ、いざとなったら現実は厳しく捨てにかかると思いますよ。そこでリーダーシップが必要だという話になる。政府は何をもって国民と対話するのかという議論になると思います。

湯浅:私は政府だけの責任だとは思わないんですよね。私たち自身が、対話する文化を社会のメインストリームにすることができなかった。本当に大事なことだし、積み重ねていかなければいけないことなんだけれど、そういうふうには評価してこなかった。

それは世界的には、各国みんながやってきたことですよ。オバマはコミュニティー・オーガナイザーの経験があるし、アジアに行けばコミュニティー・オーガナイズのワークショップが日常的に行なわれている。それが普通の光景としてある。でも日本の社会の中に、そういう光景をつくってこれなかった。そういう意味で私たちの責任です。

そうだ、ネトウヨの人たちもコミュニティーに入ってくれたらいいと思うんですが。地域の役に立つことで、プライドも取り戻せる。コミュニティー・オーガナイザーになってくれるよう、説得できないもんですかね?

日本人であることへの愛を、いいかたちで生かせないものですかね?

パトリオティズムへ置き換えられるか

やまもと:ほかにやることが見つかればいいわけだから、可能性はあるかもしれませんね。でもなんだか、1回の失敗でみんな萎えそうな気がする(笑)。

湯浅:でもナショナリズム(国家主義)をパトリオティズム(愛国主義)に置き換えればいいだけですよ。

やまもと:まぁねぇ。

湯浅: コミュニティーに参加するのはカッコいいことだと、そういう風にしないと動かないですよね

やまもと:そうですね。確かに。ただ、コミュニケーションに問題があったからネットに張り付いている人たちも多数いる中で、どこまでカッコ良さで引っ張れるかな(笑)。そういう地域の仕事で喰っていけなかったら、社会が必要だといっても結局誰もやりたがらないし。

湯浅:我々はそれをカッコいいと思わせるという点については、ほとんど考えてこなかったのです。それは大きな反省です。最近でこそ社会起業家はカッコいいというイメージが少しだけ出てきましたけど、まだまだですね。だからそういう波をつくっていかなくちゃいけない。

今回、やまもとさんが、こういうことに非常に興味を持っているということは、多くの人にとって衝撃だと思いますよ。またやりましょう。

やまもと:そうですね。話足りなかったです。

(構成:長山清子、撮影:今井康一)

湯浅 誠 社会活動家、法政大学教授

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ゆあさ まこと / Makoto Yuasa

1969年、東京都生まれ。東京大学法学部卒。2009年から足掛け3年間、内閣府参与に就任。内閣官房社会的包摂推進室長、震災ボランティア連携室長など。政策決定の現場に携わったことで、官民協働とともに、日本社会を前に進めるために民主主義の成熟が重要と痛感する。現在、朝日新聞紙面審議委員、日本弁護士連合会市民会議委員、文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ」レギュラーコメンテーター。2014年度から法政大学教授。講演内容は貧困問題にとどまらず、地域活性化や男女共同参画、人権問題などにわたる。著書に、第8回大佛次郎論壇賞、第14回平和・協同ジャーナリスト基金賞受賞した『反貧困』のほか、『ヒーローを待っていても世界は変わらない』など多数。

 

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