2030年、老人も自治体も"尊厳死"しかない

湯浅誠×やまもといちろう リベラル対談(後編)

やまもと:富山市や札幌市、神戸市などでやったコンパクトシティーの事象研究は、いろいろとまずいところもあるけど一応それなりの成果を上げています。要は保障すべき地域を縮小するわけです。

もちろん全員がいきなりいなくなるわけじゃないけど、これからは人口密度が薄くなっていく。でも地域ごとに必要な行政サービスはほとんど同じでしょう。

だから人の少ない地域の住民にはそこから撤収してもらい、人の多い地域に呼び寄せるようにして、人口密度を上げる。公共サービスを行き渡らせる範囲を狭めることによって、行政コストを下げるというのはそれなりに画期的な知見だと思います。これがどうなるかは興味がありますね。

湯浅:うーん。私はコンパクトシティーについては、本当にそれ以外にないのかなと思っているのが正直なところです。離れた地域でも行き来できる交通を保証することで、集約しなくても町の機能を維持することはできないものですか。

やまもと:上下水のメンテナンスや、緊急医療の問題もありますからね。特に救急医療に関してはエリアを絞りたいという意見が昔からあります。

湯浅: 10年、20年先の維持管理のことも考えて、そういう結論になるということですね。

やまもと:地方型過疎の対策として、被害を最小限にくいとどめる知見だともいえます。言い方は悪いですが、ダム建設のために村落を埋めたのに近い。公共のために、人口密度が薄すぎてサービスが行き届かないところの住民には理解を得て集約させてもらうほかなくなる。

東京もびっくりするほど早く衰退していきますよ。

湯浅:捨てなきゃいけない地域があるというとき、私が気になるのは、だからといって人を強制移住はさせられないだろうということです。

やまもと:難しいですね。

湯浅:上水道がなくても自分たちは井戸でやっていくという選択をするのか、あきらめて駅の近くに住むのか。その決断にともなう納得感が大事ですね。

その納得感は、自分が参画することによってしか得られないだろうと思っています。どういう選択をするにしろ、誰かに押し付けられたものじゃなくて、自分も関わって、こういう結論になったということだけが、その人たちを動かすと思う。納得できるかどうかは、さきほどのコミュニティーづくりとか、人と人との関係づくりの力量にかかってくるでしょう。

結局、今私が話しているのは、コンパクトシティーなどの政策や制度の話じゃないんです。それはたとえば尊厳死の問題も同じ。医者がマニュアルにのっとったインフォームド・コンセントを行えば患者の文句は抑えられるかもしれないけれど、それだけでは解決できないものがある。

老人も自治体も尊厳死させないとどうしようもない

やまもと:もっと根本的な話ですね。確かに納得して引き払いたいという希望は叶えてあげたい。ただ、お金の無い老人はこれ以上社会に負担を回せないので尊厳死をさせないと社会保障が回らない時代がすぐ近くまで見えてきて、それは同様に自治体も尊厳死させないとどうしようもないという状況になるのは目に見えています。

辛いことだけど、衰退を受け止めるというのは「何が良いか」と選択することじゃなくて「何をしないか」「何を捨てるか」というマイナスの判断を迫られるということなんですよ。そこに、どうやって主義や哲学を織り込んでいくのかはとても重要です。

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