2030年、老人も自治体も"尊厳死"しかない

湯浅誠×やまもといちろう リベラル対談(後編)

やまもと:ようやく今、社会活動をする人たちの育成講座が始まったけれど、間に合わないんじゃないかと。

湯浅:間に合わない可能性はあると思います。でもそれ以外やりようがないですね。それがいわゆるコミュニティーづくりの問題だと思っています。

おっしゃったように、仕事を離れて自分でコミュニティーをつくったことのある人は日本にほとんどいない。でも海外の諸外国には長い伝統があるでしょう。また日本の中にも、試行錯誤しながらノウハウを蓄積してきた人たちがいないわけではない。

被災地の高台から移転するかしないかという話や、いろんな集落の人が混在している仮設住宅の中でどうやって自治会つくるのかという話も、結局すべて、コミュニティーづくりを誰がどうやればいいのかという問題に行き着きます。

やまもと:そうですね。

湯浅:地域コミュニティーは会社と違って採用試験もないし、どんな人でもリストラできない。つまり普通の会社より多様性がはるかに高い。それをマネージするのは会社運営よりずっと大変ですよ。

でもそれを続けている人たちがいます。もちろん何百万人はいませんよ。だけど現に存在していて、その人たちのネットワークもある。こういう流れは、少なくとも私が見てきた20年の中では、現在が一番高まっています。間に合うのかと言われると、それは私だってわからないけれど。

東京23区も急速に高齢化が進む

やまもと:なんとかして、一気にブレークスルーする方法はないですかね。今はこれしかできないから、できることをやるというのももっともだし、粛々とやっていく必要があります。ただこのままいけば確実に破綻してしまう。

このあと何が起きるかというと、ご存知でしょうが都市部の高齢化です。東京だって、23区あたりですら、櫛の歯が抜けるように住人がいなくなって、残った高齢者をカバーするコミュニティーがあまりない。さほど地縁も血縁もない中で暮らしてきた人たちが高齢化して、引っ越したくても引っ越すカネもなければお手伝いもいない状態になっている。

彼らがいまからコミュニティーをつくりだせるかといったらなかなかできないし、比較的元気な人たちにコミュニティーのための社会活動をしてくださいといっても、老朽化した分譲マンションのエレベーターなし4階建て集合住宅の最上階に住んでいる独居老人の世話は、同じ老人にはムリですよ。だとすれば、若い人を投入しないといけない。

湯浅:先にそういう状況に直面していたのが、東京の山谷とか、大阪の釜ケ崎ですね。釜ケ崎などでのコミュニティーづくりの歴史は長いです。単身高齢者の町ですから、若い学生ボランティアを呼び込んでみたり、子どもたちが夜回りしてみたり、自分たちで起業みたいなことをしたり、いろんなことをやる中で、なんとかあのレベルで押し止まっているわけです。

やまもと:でもあれは、ちょっと言い方悪いですけど、まだ社会に余裕があったから、ヤバい地域に手を回して、手伝える人やカネを補給できた。今後はそれがなくなっていくと思いますよ。

湯浅:そこまで極端じゃないでしょう。今は出生率1.3〜1.4だから、人口は急速に減っていきますが、いきなりゼロになるわけではない。

だからそこに住む人たちも含めてやっていくしかない。多くの人はいままで地域貢献的なことに未参加だったけれど、今後は専業主婦や高齢者などが参加することで、人を増やしていく必要がある。要するに分母が減るんだから、分子のほうを増やして、活動する人の割合を高めないといけない。それが全員参加型というスローガンになっています。

そういうふうにやっていくことでバラ色の未来が描けるわけでなくても、リアルに考えれば考えるほど、もしそれ以外のやり方があったら教えてくださいということです。

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