高齢者が激増、迫る「医療危機」の実態 最期を穏やかに過ごすのは、本当に難しい
ニッポンの医療はこのままでは高齢者の激増に耐えられない。未曽有の危機に、われわれはどう向き合うべきか――。
2025年、団塊世代はすべて75歳以上の後期高齢者となり、75歳以上人口は2010年に比べ約760万人増加する見通しだ。この増加数は愛知県の人口を上回る。
その結果、激増するのが入院需要である。特に高齢者に多い、脳血管疾患や肺炎、骨折、慢性心不全などで、入院の急増が見込まれている。たとえば、産業医科大学の松田晋哉教授の推計では、福岡市(福岡糸島医療圏)の入院患者数は、2030年に脳血管疾患と肺炎で1.7倍強、虚血性心疾患と糖尿病で1.6倍になると見込まれている。高齢者の増加が見込まれる全国の都市で、同様のことが起きると考えてよい。
慢性的な病床不足の可能性
左の地図は、千葉大学附属病院の高齢社会医療政策研究部が作成したものだ。現在の入院受療率、患者の受療行動、病院の状況が変化しないと仮定して、将来人口推計から2030年の状況をシミュレーションした。患者の住所地から1時間以内に着く医療機関に、入院することができなくなる確率(危険率)を、500メートルメッシュごとに色分けして示している。東京都心などピンク色の地域は、入院する病院を探す際に、5回に1回以上は入院する病院が見つからないことを示している。現在の医療が大きく変わらなければ、これら地域やその周辺部は、慢性的に病床が不足する可能性がある。このような入院困難な患者は2020年頃から出現し始める。
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