商船三井と川崎汽船、異例の業績上方修正のわけ コンテナ運賃が高止まり、どこまで続くのか

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――運賃高騰の背景に何がありますか。

新型コロナウイルス感染症による巣ごもり需要の継続がある。これに加えて荷主による在庫確保の動きも挙げられる。

2020年5月時点では、コンテナ貨物の最大の輸出国である中国での工場の操業が再開されたばかりで、新型コロナの影響が続いていた。ロックダウン(都市封鎖)が頻発し、テレワークや郊外への移住が盛んになった欧米では、2020年夏以降に巣ごもり需要が本格化して現在まで続いている。

日本海事センターによると、日本や中国などアジア18カ国・地域からアメリカ向けのコンテナ輸送量は、前年同月比50.6%増の186.1万TEU(1TEUは20フィートコンテナ1個分の貨物量)となった。1~5月の累計でも、輸送量は前年同期比39.5%増を記録している。2020年の反動もあるが、家具や機械類、繊維製品、自動車部品、玩具などの主要品目がおしなべて大きく増加しており、輸送量の水準がかなり高い。

港湾内にコンテナが山積みに

――荷主による在庫確保の動きとは。

中国では比較的早い時期に新型コロナの流行が収束したが、欧米ではロックダウンが続き、港湾機能の低下も長引いている。

まつだ・たくま/1973年生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科博士後期課程単位取得退学、博士(学術)。日本海事センター主任研究員を経て、2020年4月より現職。専門分野は海運経済学(本人提供)

港湾労働者や物流に携わる人々は、ロックダウン下でもエッセンシャルワーカーとして通常の労働が認められているものの、感染の波が高まると当人や家族が罹患して、荷物を運ぶ人がどうしても減ってしまう。そのため、感染の波が低いうちにできるだけ早く商品在庫を確保しておこうという動きが欧米の企業を中心に相次いだ。

また、アメリカでは新型コロナ対策として新たな給付金が2021年に入って配られ、消費需要がさらに高まった。旺盛な消費に応えるためにも在庫確保の動きが強まっている。

――港湾はどんな状況になっていますか。

コンテナ船はあらかじめ定められた航路を運航しているが、スケジュールどおりの運航ができなくなっている。新型コロナによって港湾労働者の出勤がままならなくなり、港湾機能が大幅に低下したためだ。港湾内には荷揚げしたコンテナが山積みになっている。

荷さばきが進まないためにコンテナ船が入港できず、1~2週間も「沖待ち」を強いられる船も急増した。2月にはアメリカ西海岸のロサンゼルス港やロングビーチ港では沖待ちのコンテナ船の数がピークに達した。この影響は西海岸だけでなく、東海岸の港湾にも渋滞をもたらした。

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