商船三井と川崎汽船、異例の業績上方修正のわけ コンテナ運賃が高止まり、どこまで続くのか

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3月下旬にはスエズ運河で大型コンテナ船が座礁し、運河を経由するアジア・ヨーロッパ間やアジア・北米東岸間の海上物流に1カ月以上にわたって影響が出た。北米東岸の港にも西岸の混雑を避ける荷物が増え始めていた時の出来事だった。

喜望峰周りに経路を変えたり、運河の近くで通航を待つだけでなく、出発地で出港を待つ動きもあった。5月末には中国の深圳にある塩田港で港湾労働者のコロナ感染者が相次いで見つかり、港湾当局が検疫を強化。港湾の稼働率が大幅に低下した。塩田港の機能は6月下旬にようやく正常化したが、輸出を待つ荷物が港湾内にまだ積み上がっているため、影響が解消されるまでに数週間かかりそうだ。

港に荷揚げしたコンテナを運ぶトラックのドライバーや、コンテナを載せるシャーシや貨車も不足している。荷主に届いた後もコンテナが滞留している。深刻なコンテナ不足に直面した海運会社は、空コンテナを回収するためにわざわざ欧米の港に船を差し向けている。現在でも、アジア、アメリカ、ヨーロッパの各地で港湾機能の低下が続き、主要港での混雑も解消されていない。

混乱は来年の春節まで続く

――運賃の高騰局面はいつまで続くと見られますか。

現状は実勢より高騰しているのではないかと考えている。ワクチン接種が進んでコロナ禍が収束し、港湾や荷主のオペレーションが元に戻れば、平常化していくだろう。ただ、それがいつごろになるかは見通せない。

9月になるとクリスマスシーズンに向けて荷動きがさらに活発になる。コンテナ輸送の混乱は、クリスマスシーズンが過ぎた後で工場労働者が休みとなる2022年の春節あたりまでは続くとみている。ただし、運賃が現状のような高水準で維持されるかどうかも不透明だ。日本の海運大手は2021年10~2022年3月期の業績を厳しめに見ているが、高い水準の運賃が続けば再び上方修正となる可能性が高い。

一方、今の状況が続けば、高騰した運賃の販売価格への転嫁は間違いなく本格化するだろう。それができない企業は、輸送コストの上昇分を負担しなければならず、業績が悪化する。

――コンテナ船社が相次いで大型船建造を発注しています。需給バランスが崩れる可能性はないのでしょうか。

4月時点で発注隻数はすでに2020年の1年間の累計を超えている。竣工が相次ぐ2~3年後に、需要がどうなっているかが鍵になる。

2010年にコンテナ船不足が原因で市況が急騰した際にも、建造ラッシュが起き、船腹過剰が顕在化した。運賃は2016年まで下落基調が続き、業績の悪化したコンテナ船各社の再編や韓国の韓進海運の倒産を招いた。

2015年以降、世界の主要コンテナ船会社は17社から9社にまで減った。当時と比べると会社の数が異なるなど競争条件は異なるが、コンテナ輸送は大規模投資が必要な一方で、サービスの差別化が難しく、競争が激化しやすい。そのため、中長期的に見た場合、需給バランスの悪化は懸念材料となる。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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