こうした予算の繰越は給付金だけではない。公共事業費でも使われている。
近年における国の公共事業費の執行状況をみてみよう。2017年度当初予算の公共事業費は6兆円が計上され、その後の補正予算で1兆円追加されて7兆円となった。前年度からの繰越も2.6兆円あり、合計9.6兆円が支出可能な状態になっていた。
ところが、決算までに6.9兆円支出したものの、残りを使い残したため、2.6兆円を翌年度に繰り越した(その差額は結局支出しないこととした不用額)。この繰越額は一般会計予算全体の繰越額4.3兆円の約61%を占めた。
使い切れない公共事業費
2018年度は当初予算、補正予算合計で7.6兆円が計上され、前年度からの繰越は2.6兆円だった。翌年度に3.2兆円を繰り越した。この繰越額は一般会計予算全体の繰越額5.1兆円の約63%を占めた。
2019年度は同様に合計8.5兆円の予算に対し、前年度からの繰越が3.2兆円となった。3.9兆円を翌年度に繰り越した。これは、一般会計予算全体に占める比率は約59%だった。
このように、公共事業費は前年度からの繰越があるにもかかわらず、毎年度補正予算で新たに追加予算を計上したうえに、年々増加する形で翌年度に繰り越している。本稿執筆時点で2020年度決算は公表されていないが、新型コロナの前である2019年度まででみても、当初予算の公共事業費の半分近くが、前年度から繰り越されてくるほどの状況である。
本当に公共事業費が足りないのなら、まずは前年度からの繰り越し分までも含めて、今年度で使える予算を使い尽くせるはずである。しかし、実態はそうなっていない。公共事業費は使い切れておらず、補正予算を追加計上するぐらいなら、まずは前年度からの予算の繰越を使うことから始めればよい話である。
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