6月9日に開催された党首討論で、国民民主党の玉木雄一郎代表は通常国会の会期を延長して2021年度補正予算を編成するよう、菅義偉首相に問うた。これに対して、菅首相は2020年度からの繰越が30兆円程度あることを示唆した。
予算全体の繰越額は、新型コロナ前でも7兆円弱だった。ところが、2020年度は新型コロナの影響で予算執行が進まなかったこともあり、2019年度の繰越額の4倍以上もの繰越が2021年度に回されることになる。
補正予算相当の巨額の繰越が発生
30兆円は、新型コロナ前の一般会計予算の規模100兆円の3分の1に相当する。2020年度第2次補正予算単体でも、追加した一般会計歳出額は31.9兆円と過去最高だった。30兆円の繰越というのは、過去最高規模の補正予算1個分に匹敵するから、衆院選を前にして、すでに補正予算を組んだも同然の状態といってよい。
おまけに、2021年度当初予算で計上した新型コロナウイルス感染症対策予備費は本稿執筆時点でまだ4兆円も残っている。これは、今後内閣が事前に国会の議決を経ないで使途を決めることができるものである。
それでも補正予算を組むとなると、臨時国会を開いて予算審議を衆参両院で行わなければならない。与野党ともに補正予算の編成に好意的ならば最短で1週間程度、与野党が激しく対立するなら、半月から1カ月程度の審議期間が必要となる。
いずれにしても、衆議院を解散するなら10月までに臨時国会を開かなければならない。そのついでに補正予算審議をすることもありえなくはない。しかし、国会の予算審議では、予算内容だけでなく、政府の新型コロナ対応や東京五輪に向けた姿勢なども審議可能である。補正予算案の審議は、補正予算を通す話にとどまらず、野党の政府批判の格好の舞台を提供することになりうる。衆院選を前にすれば、なおさらだろう。
前年度からの巨額の予算繰越や繰り越しても消化しきれないほどの公共事業費、たくさん残る新型コロナ予備費、野党の政府批判の格好の舞台となる予算審議などを考え合わせると、よほどの予期せぬ事態が起きない限り、菅内閣が衆院選前に敢えて補正予算を組むことはないだろう。
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