都知事選、「都債増発で公約実現」の落とし穴 東京都が「財政再生団体」に転落してしまう?

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都知事選では都政のあり方をめぐって論戦が繰り広げられている(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

7月5日に投開票される東京都知事選では、都政のあり方をめぐり論戦が繰り広げられている。その中で、東京都の借金である都債も1つの焦点となっている。

新型コロナウイルス対策として、東京都は緊急事態措置を発して多くの業種や施設に休業要請を行った。要請に応じた事業者などには協力金を給付し、重症患者を受け入れるべく病床の確保など医療提供体制を拡充した。

都債の増発余地はあるのか

東京都は、2020年度に入って1兆円を超える予算を増額して、コロナ対策のために支出できるようにした。ただ、その財源の工面は容易ではなく、東京都が積み立てていた財政調整基金を取り崩して捻出し、その残高は約9350億円から493億円まで大幅に減少した。今後、2020年度の税収が予算の見込みより減少すれば、都債の追加発行は不可避となる。

都知事選では、新規の施策のため15兆円もの都債増発が必要な公約を掲げている候補者もいる。こんな状況で、東京都は都債を増発できるのだろうか。

都知事の意思決定次第では、意外と増発できる可能性がある。地方自治体が地方債を発行するには、地方債協議制度に則った手続きを取らなければならない。都道府県と政令指定都市は総務大臣、市区町村は都道府県知事の同意を得なければならないが、2016年度以降、一定基準以上に財政状況がよい(実質公債費比率が18%未満の)自治体は、民間金融機関から借りる形で地方債を発行する場合に限り、届出だけで地方債を発行できるようになった。

ただ、一定基準以上に財政状況がよい自治体でも、国(財政投融資)からお金を借りる場合には、届出でなく同意が必要で、同意が得られれば、民間金融機関から借りるより長期・低利で借りられる。

東京都は、実質公債費比率(標準的な状態で経常的に得られる税収に対する実質的な公債費の割合)は近年1.5%前後で、都債の大半を民間金融機関から借りている。しかも、その大半を市場で公募する形で発行している。したがって、国から同意を得なければ都債が発行できないという立場ではない。

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