都知事選、「都債増発で公約実現」の落とし穴 東京都が「財政再生団体」に転落してしまう?

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過去に専決処分を乱用した首長がいたこともあって、事後的に議会に承認を経ることになっている。条例や予算に関する専決処分は、議会で不承認とされた場合には、首長は必要と認める措置を講じるとともに議会に報告することが義務づけられた。それでも、その専決処分が違法でなければ、議会で不承認となっても効力は失われない。

つまり、都知事は都債を大量に増発する予算案を都議会が否決しそうなら専決処分をし、民間金融機関に消化を協力してもらえば、新規施策が実行できるということになる。ちなみに、小池都知事の専決処分はほどなく都議会で承認されている。

「財政再生団体」転落の可能性

このように考えると、都知事は何でも可能なように見える。だが、5~10年後に都債を償還するときに落とし穴が待ち受けている。都債といえども償還期限は5~10年。民間金融機関もそれより長い満期には付き合えない。償還期限が到来すると、完済しないまでも相当程度を返済するため、償還の財源が必要になる。その額が兆円単位となると、東京都は「財政再生団体」に転落するかもしれない。

東京都の一般会計は、2020年度当初予算で歳出総額が7.4兆円、税収が5.4兆円。地方財政健全化法に基づき、実質赤字比率が約8.5%を超えると、都道府県は財政再生団体、つまり北海道夕張市と同じ状態になる。

実質赤字額が約3000億円を超えると、東京都は財政再生団体に転落する。リーマンショックが起きた2008年度に5.3兆円あった税収が2009年度には4.3兆円へ、たった1年で1兆円も減るような東京都の税収構造である。兆円単位の借金返済を強いられる年に、税収減に直面すればひとたまりもない。

財政再生団体になれば、予算などについて国の指図を受けなければならず、独自の行政サービスはほぼ不可能になる。その前に、実質赤字比率が2.5%を超えると、都債は総務相の許可を受けなければ発行できなくなる。

今の東京都の健全財政路線は、1998年度に実質赤字が1000億円に達し、財政再建団体(当時)に転落しかけたため、それを避けようとする努力から始まった。任期が4年の都知事が、償還期限が5年を超える都債を大量に発行して、その返済時にはその座にいないようなことにならないよう、議論が必要だろう。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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