都知事選、「都債増発で公約実現」の落とし穴

東京都が「財政再生団体」に転落してしまう?

しかし、東京都の一般会計(2020年度当初予算)で、歳出総額に対する都債収入の割合は2.8%である。ちなみに、公共事業費に相当する投資的経費は歳出総額の14.3%である。対象事業について75%~90%ほどある地方債充当率からして、対象事業で都債を増発できる余地がまだあるといえる。現都政は都債発行を抑制しようとしており、地方債充当率に達するまで目いっぱい都債を発行していないというわけだ。

となると、地方債の使途として認められている対象事業に充てる名目で都債を発行しつつ、当初その事業に充てようとしていた税財源を付け替えて、給付金など地方債の使途として認められない新規事業の財源に回せば、都債を追加発行して新規事業を事実上実施できることになる。

都債増発に立ちはだかる壁

だが、都債増発に立ちはだかる壁がある。1つは民間金融機関である。前述の通り、都債の大半は民間金融機関が引き受けている。しかもその多くは公募発行である。

公募発行は、定期的に定まった金額をコンスタントに発行することで、安定的な起債が可能となる。巨額の都債を突然増発して、民間金融機関に都債の消化を無理に押し付けるわけにはいかない。消化が滞れば、これまで築き上げてきた証券市場での銘柄と安定的に起債できるという地位を失ってしまう。増発するとしても、民間金融機関が納得できるような形で起債しないといけない。

さらに、都議会である。都債を増発するにせよ、予算案は都議会での議決を要する。新しい都知事も、都議会の意向を無視できない。都議会で過半数の賛成を得なければ、都政は運営できない。

しかし、国と違って地方自治体の首長の権限は強い。そこが、議院内閣制ではなく二元代表制であることの特徴の1つだろう。予算や条例について、知事は「専決処分」を行うことができる。専決処分とは、議会の議決を経なければならない案件について、地方自治法の規定に基づき、議会が議決する前に首長が処理することである。予算や条例について、緊急を要するなど条件を満たせば、議会の議決がなくても決済できるのだ。

小池百合子都知事も、新型コロナウイルス感染症対策として2020年度補正予算や感染症対策条例などを専決処分している。もちろん、多くの自治体でも専決処分はしばしば用いられている。

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