コロナワクチンの接種を加速させるためのボトルネックは、いまやワクチンの確保よりも、打ち手の確保に移った。
医師と看護師しかワクチンが打てないとする従前の法規制を緩和して、歯科医も打てるようにした。5月31日には臨床検査技師や救急救命士も打てるよう大筋合意された。高齢者以外の一般向け接種を進めるには、打ち手不足の解消が求められる。
人材の不足という点で共通しているのは、2024年度以降の医師不足についての懸念である。団塊世代が全員75歳以上となる2025年度ではなく、2024年度に医師不足が懸念されるのは、2018年6月に成立した働き方改革関連法により、2024年4月から医師にも時間外労働の上限規制が適用されるからだ。
上限規制で医師の過労を防止
医師の健康が確保されてこその医療である。2024年の上限規制導入によって、医師の過労を減らすのはよいことである。
もともと病院勤務医の過労が問題視されていたが、安倍晋三内閣が着手した働き方改革の流れを受けて導入された。2017年3月に働き方改革実現会議が取りまとめた「働き方改革実行計画」の中で、罰則付きの時間外労働の上限規制の導入が提言された。
その中で、医師については時間外労働の規制対象とするものの、医師法に基づく応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要であることから、改正法の施行期日の5年後をメドに規制を適用することとされた。
働き方改革関連法はこの議論を反映し、労働基準法に時間外労働の上限を定め、それを超えて働くことはできないことにした。この上限規制は、2019年4月からは大企業への適用がすでに始まり(中小企業への適用は2020年4月から)、その5年後に当たる2024年4月から、医師にも適用される。
ただ、医師にどのような形で上限規制をかけるかは、働き方改革実現会議では詰め切れず、働き方改革関連法では厚生労働省令で定めることとした。具体的な上限規制の中身に関する議論は、厚生労働省に設置された医師の働き方改革に関する検討会が引き取った。
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