この議論を引き継いだ医師の働き方改革の推進に関する検討会が2020年12月に公表した中間とりまとめによると、時間外労働が年1860時間を超えると推定される医師がいる病院の割合は、2019年に全体の21%あった。特に、大学病院では46%、救命救急機能を有する病院では49%、病床が400床以上ある病院では39%にのぼる。
働き方改革関連法が成立したこともあって、医療機関は医師の労働時間の短縮に努めており、その割合は低下しているが、2024年度から適用される上限を超えて勤務する医師がまだ存在する。
年1860時間以下の対象となるのは特例が受けられる医療機関であって、原則は年960時間以下である。また、厚労省はなるべく多くの医療機関で年960時間以下となることを求めている。研修医などを除き、年1860時間以下の特例は2035年度末に廃止予定としている。前掲の中間取りまとめによると、病院常勤勤務医の労働時間は、2019年の調査で37.7%が年960時間を超えている。
医師の時間外労働に支えられた医療提供体制
こうしてみると、これまでの各地での医療提供体制は、医師の時間外労働の上限規制がない状態で営まれてきた。別の言い方をすれば、わが国の人口当たり病床数や平均在院日数が先進国で一番多いのは、時間外労働の上限規制がない形で働く医師によって維持されていたといえる。
医師の労働時間を短縮すれば、病床がいくらあっても医療の供給はその労働時間に制約されたものとなる。
したがって、2025年度までに高齢者の人口が減少して入院医療需要が減ることが見込まれる地域では、医師の過労を減らすこととあわせて、病床数も減らしてゆくことが望ましい。入院医療の需要が減っているのに、病床を残して医療従事者を雇い続けると、病院経営が成り立たない。あるいは、入院が必要のない患者を入院させ続ければ、寝たきりの高齢者が増えてしまう。
そうならないように、科学的根拠を持って病床機能の分化と再編を促しているのが地域医療構想である。
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