「築47年、収納ゼロ物件」で心底満足できる理由 「部屋は狭いほうがいい」に辿り着くまでの軌跡

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……というわけなんですが。

あれから5年。

今も、私は件の家に相変わらず住み続けている。つまりは、あの夜の決意にもかかわらず、残念ながらステップアップをすることは未だできずにいるわけです。

ステップアップしたのは「心」だった

ところが。

フフフふーん。

私はある意味、心のステップアップというべきものを果たしたのである。いやね、確かに客観的状況は変わらない。でも私自身がすっかり変わったのだ。

今の私は、広い家に引っ越ししたいなどとはこれっぽっちも思っていない。それどころかですよ、今や散歩などしてそこらの豪邸を見るたびに、誠に勝手ながら「お気の毒に……」と心から同情したりしているのである。いやほんと。

どういうことか。

私はこの5年間で、家は狭いほうがいい! 断然いい! ということを身をもって悟ったのだ。

となれば、私は今後、今以上の住宅費を払うことなど決してないであろう。いや正直言うと、今の家でもチョット広すぎると思う今日この頃である。故に将来はもっと小さい家に嬉々として引っ越す可能性も高い。

これがどういうことかと言いますと、私は家賃という恐ろしい呪縛からそこそこ脱出したということに他ならない。穴の開いたバケツ人生であることからは逃れられないとしても、その穴はすでに小さく、さらにこれからどんどん小さくなっていくにちがいないのだ。

これ以上の安心ってものがあるだろうか……と、ここまで書いたところで文字数が尽きた。というわけで、肝心の「なぜそのような結論に至ったか」は、次回から詳しくお伝えしようと思う。

稲垣 えみ子 フリーランサー

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いながき えみこ / Emiko Inagaki

1965年生まれ。一橋大を卒業後、朝日新聞社に入社し、大阪社会部、週刊朝日編集部などを経て論説委員、編集委員をつとめる。東日本大震災を機に始めた超節電生活などを綴ったアフロヘアーの写真入りコラムが注目を集め、「報道ステーション」「情熱大陸」などのテレビ番組に出演するが、2016年に50歳で退社。以後は築50年のワンルームマンションで、夫なし・冷蔵庫なし・定職なしの「楽しく閉じていく人生」を追求中。著書に『魂の退社』『人生はどこでもドア』(以上、東洋経済新報社)「もうレシピ本はいらない」(マガジンハウス)など。

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