「築47年、収納ゼロ物件」で心底満足できる理由 「部屋は狭いほうがいい」に辿り着くまでの軌跡

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「風呂なし」というのも良かった。銭湯生活をするつもりだったから風呂はいらなかったんである。その分家賃が安ければ言うことなし。で、確かに家賃は格安。いヤーこれぞ私が探し求めていた家なのでは?

というわけで、希望に燃えてトコトコと見学に参ったわけです。

家を変えるとは人生を根底から変えること

うむ。

やはり、限られた予算の中で何かを得ようというのは簡単なことではなかった。

確かに眺望はすごい。5階建ての5階というのもまったく本当である。だがどう見ても、これは4階建てのビルの上に建った小屋だ。ゆえに、見晴らしが良いうえに風が四方八方の窓から入ってくるのはいいが、ほぼ危険を感じるほどの強風である。

さらに幹線道路沿いなので風とともに車の轟音ももれなく入ってくる。不動産屋さんも「窓は開けないほうが良いかもですね……」。眺望を楽しむのも命がけだ。加えてなぜか、床が明らかに斜め。そして天井が非常に低く、少し手を伸ばすと余裕でビッタンこと手のひら全部がつく。

いやね、それもこれも含めて惹かれるものがないわけじゃなかったんですよ。というか、懸命にそう思おうとした。屋上の小屋暮らしなんて考えようによっては都会のツリーハウス生活と言えないこともない。

また隣の小屋にはインド系の方が住んでるらしく、「カレー分けてもらえるかもしれませんよ」との不動産屋さんの助言にもちょっと心を掴まれた。銭湯も近い。もちろん家賃も魅力である。

だが正直、ひるんだ。

騒音の中、夜はちゃんと眠れるだろうか。また屋上の小屋となれば夏の暑さは尋常ではなかろう。何しろ私、エアコン持ってない。さらに、これほど天井が低いと毎朝の習慣であるヨガをするのも困難である。

っていうかヨガ以前に、斜めの床で暮らすってそもそも健康に悪そうな……なるほど家を変えるとは人生を根底から変えることなのだ。

夜寝れるとか、家でヨガができるとか、エアコンがなくてもなんとか生きていけるとか、これまで得てきた特権とも思わなかった特権を、特権だと気づくことなのだ。そしてその特権を容赦なく失うことなのだ。そこまでの変化を平気の平左で受け入れることができるかどうかが今まさに問われているのである。

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