6月はメジャー第2戦、全米オープンの月。全米オープンは、テレビで見るかぎりでは4月のマスターズに比べ足首が隠れるほどラフが深く、コースがいかにもタフ、そう感じる人も多いようです。
そんな方々から「初めて全米オープンに出たとき、コースを見て脅威を感じませんでしたか」、そんな質問を受けることがあるんです。
そりゃ、日本のコースで休日の楽しみとしてゴルフをしている人から見たらそう思うかもしれませんが、一応、海外のトーナメントで戦ってみたい、そう思うプロが全米オープンに出場するのですから、覚悟ができているというか、コースを見て驚いているようでは、その選手の先が見えてしまいます。
ツアープロという職業は、日本あるいは世界各地のゴルフコースへ行って、そのコースをどう攻略するかが仕事。同じ味わいのコースはないわけですから、今度はどんなコースと出会うか、選手の心の中に期待感があると言ってもいいでしょう。
1980年、バルタスロールで行われた全米オープンでのジャック・ニクラスとの試合はいまだに引き合いに出されますが、7000ヤードでパー70、当時としては、えらくタフなコースでした。
18ホール中、セカンドショットで13回もバフィーを使うほどでしたが、土曜日曜の決勝ラウンドになると、そこから3アイアンや4アイアンでグリーンを狙えるようになるんです。緊迫した優勝争いで体からアドレナリン、そのころは火事場の馬鹿力と言っていたけれど、人間の体に潜在能力があってタフなコースでプレーをしていると、それなりの力が出てくるもの。それに動物的な勘も養えるんですよ。
スポーツマンには普段のトレーニングは不可欠なものですが、自分では気づかない体の内面に潜んでいる能力に気づかせてくれるのも、メジャートーナメントにチャレンジしたご褒美なのかもしれません。
と言いながらも、自分が海外のトーナメントに芯からなじんでいるかというとそうでもありません。「自分一人で3週間、カアチャンいても3カ月」、これが海外に滞在できる制限時間です。
いまの20~30歳代の人達と違い、アメリカやヨーロッパは自分にとっては遠い遠いところなんです。いまもそうですが、日本と海外を年に数回行ったり来たり。これが大変そうに見えても、「何週間後にわが家に帰れる」、自分たちの年代にはこれが支えになっているんです。
尾崎直道に「ホームシックになるのはいつごろ?」と聞いたら、「アメリカのホテルに着いたその日」と。
なんだかんだと言いながらも日本はふるさと、いい国ですよ。
1942年千葉県生まれ。64年にプロテスト合格。以来、世界4大ツアー(日米欧豪)で優勝するなど、通算85勝。国内賞金王5回。2004年日本人男性初の世界ゴルフ殿堂入り。07、08年と2年連続エイジシュートを達成。現在も海外シニアツアーに参加。08年紫綬褒章受章。
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