今回から執筆陣に加えていただくことになりましたコシノヒロコです。まずはファッションデザイナーとして、グリーンの上でのファッションについてお話ししたいと思います。
街では今やあらゆる世代でカジュアルな服装が全盛期。ゴルフウエアとの境界も小さくなる一方です。特に女性ゴルファーの皆さんは、日常的にカジュアルウエアを上手に着こなしているせいか、グリーンに出ても大変ファッショナブルです。
以前は違いました。英国仕込みの日本のゴルフ場は服装のルールに厳しく、おまけに、普段スーツしか着ない人が休日には別人のような格好でグリーンに出ているというのは、少々滑稽ですらありました。いま、見違えるようにファッショナブルになったのは、タウンウエアとゴルフウエアとの差が小さくなったことに加えて、かつて一部のお金持ちか老人に限られていたゴルフというスポーツが、普通の人々に開かれるようになったからでしょう。若いプロがどんどん誕生し、人気スポーツとしてすっかり定着しました。
舞台に立つ人、たとえば役者やオペラ歌手の皆さんは、客席のファンが放つパッションによってパフォーマンスをより一層すばらしいものにするといいます。そのパフォーマンスによって観客はさらに感動、舞台と客席との間でエネルギーの交換が行われ、相乗効果が生まれるのでしょう。
グリーンの上でも同じだと思います。ギャラリーを沸かせることによって、ゴルファーはさらにすばらしいプレーを見せることができるのです。ゴルフはスタイリッシュな自己認識を必要とするスポーツですから、もっとも心地よく、同時に、自分をもっとも魅力的に見せるファッションで演出することが必要です。センスがよいこと、美しいことは、人気につながり、ギャラリーを魅了することでパフォーマンスはより向上するでしょう。劇場と同様、グリーンの中でも役者と観客が一つのストーリーを創り上げるのです。
一時期、若い女性ゴルファーが短いシャツを着ておへそが見えていることが問題視されたことがありました。彼女たちは何もセクシーな格好で男性ファンの目を引こうとしているのではなく、自分のスタイルをグリーンの上でも貫いているだけです。日常的に胸元や脚を見せている人は、その延長線上でゴルフを楽しめばよいのです。ゴルフウエアは、日常のファッションと切り離されるべきではありません。日常着に少しだけリゾートのエッセンスを加えたものであるべきです。
今年からスポーツブランドとコラボレーションで女性のゴルフウエアをデザインさせていただいています。洋装の歴史のまだ浅い日本が、世界のストリートカジュアルをリードする時代です。自由に、自分自身のメッセージとしてファッションを楽しむ多くの女性に、グリーンの上でも輝いていただきたいと思っています。
1937年大阪・岸和田生まれ。文化服装学院在学中よりキャリアを重ね、東京、ローマ、上海、ソウルなどでコレクションを発表、2009年からは17年ぶりにパリコレクションも再開。近年は書画作品の展覧会も多数開催している。97年第15回毎日ファッション大賞受賞、01年大阪芸術賞受賞。
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