北陸のドラッグ風雲児「ゲンキー」の安売り戦略 コスモス薬品を追うローコスト経営の徹底ぶり

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経費率は上場13社の中で最低水準だが、ゲンキーはまだまだ満足していない。「経費率15%を目指していきたい」と吉岡副社長の鼻息は荒い。

ゲンキーが目標としているのは、「日本一のディスカウンター」と吉岡副社長が呼ぶ業界3位のコスモス薬品だ。コスモス薬品は1993年に本格的なドラッグストア店舗を開店し、多店舗化を開始。現在は福岡など九州を地盤に1130店舗を展開し、関東でも出店を始めている。

コスモス薬品はディスカウント戦略で先行するだけでなく、経費率でもゲンキーを下回っており、ローコスト経営でも一枚上手の存在だ。日替わりや商品別のポイント還元を行わず、業務効率化が徹底されているほか、カード会社などへの手数料がかかるキャッシュレス決済も行っていない。

加速する小売業のEDLP化

ゲンキーもコスモス薬品に追いつけ追い越せと、さらなる店舗業務の効率化を推進する。食パンやビール、洗顔料などのPB(プライベートブランド)商品の強化も急ぐ。PBの売り上げ比率を現状の18%から30%にまで引き上げる方針だ。

ゲンキーの生鮮食品の品揃えは食品スーパーにもひけをとらない(写真:ゲンキー)

PBはメーカーや卸などから仕入れる必要がない。そのため、安価で販売しても利益を確保できる。PBの利益を原資として、メーカーなどから仕入れた商品のディスカウントも強化できる。

ただ、EDLPを進めるのはゲンキーやコスモス薬品だけではない。業界8位で神奈川県が地盤のクリエイトなどほかのドラッグストアもそうだ。コロナ禍で集客を伸ばしたスーパー各社もEDLPへと舵を切っている。中部地区でスーパーやドラッグストアを展開するバローHDは、3年後にチラシを全廃し、全店をEDLPに切り替えると表明している。

EDLPでは、PB商品などの品ぞろえや食品の鮮度などで魅力を出していかなければ、価格一本やりの勝負に陥りかねない。食品などスーパーの事業領域にも侵食し、拡大・成長してきたドラッグストアだが、EDLPシフトが進む中で競争は新たな局面を迎えそうだ。

星出 遼平 東洋経済 記者

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ほしで・りょうへい / Ryohei Hoshide

ホテル・航空・旅行代理店など観光業界の記者。日用品・化粧品・ドラッグストア・薬局の取材を経て、現担当に。最近の趣味はマラソンと都内ホテルのレストランを巡ること。

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