ワクチン接種の大混乱に浮かぶ日本の致命的弱点 政治家のリーダーシップや官僚の保身以外にも

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ひとつのミスも許されない、という雰囲気になってしまっているのは、日本の場合はテレビや新聞、そして週刊誌に至るまで、同じ報道を繰り返し、繰り返し報道する傾向が指摘されるからだ。政治家や行政の失敗を批判するニュースが目立つ。それも通常のニュースだけではなく、「ニュースショー」と称するバラエティー番組で繰り返し、細かな点にまでミスをついてしまう傾向が強い。

ワクチン接種について、日本政府が消極的なのも、メディアが長年にわたってワクチンによる副反応をことさら強調する報道を繰り返してしまったのもひとつの要因といっていいのかもしれない。日本のメディアは、記者クラブ制があって、すべて横並びで報道するため、きちんとしたエビデンスや調査に基づく報道が弱い。感情的な報道をしたほうが視聴者や読者にも受けて収益も上がる。

こうした報道ができるのは、資金面で余裕のある大手メディアしかないのだが、残念ながら日本ではその大手メディアほど記者クラブで得た情報をだらだらと報道する傾向が高い。こうした傾向は日本だけの問題ではないが、日本のコロナ対策が後手に回っている要因のひとつといっていい。

ミスをした人間を容赦しない日本のメディア

そもそも、日本にはメディアに一度叩かれたらとことんやられてしまう、という恐怖心が官僚や公務員、政治家、そして一般の国民にあるのも事実だ。日本のメディアはとりわけ、ミスをした人間を容赦しない。タレントであろうが政治家であろうが一般人であろうが、どことなく許せないという雰囲気を作ってしまう。

こうしたメディアの姿勢が、パンデミックのような状況には大きな負の要因になってしまった傾向がある。日本は太平洋戦争のときにメディアも揃って政府・軍部の言いなりとなって、一直線に戦争に進んでしまった経緯がある。これと似たような状況が、現在のメディアには見え隠れする。
これは、ある意味でメディアの驕りなのだが、スポンサーである企業や視聴者である国民にもその責任の一端があるのではないか。感染症という病気と闘う以前の日本全体の雰囲気に原因があるような気がしてならない。

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