もともとワクチンの有効性についての審査は、副反応の分も含めて数万人単位で実施してみてはじめてその実態がわかるものだ。後でなんらかの副反応がある可能性は高く、アストラゼネカのように100万人当たり4人に血栓ができるといった指摘も出てくる。
よく自国でワクチン開発ができなかったために、日本は遅れたという指摘を耳にするが、イタリアやフランス、スペインでも自国でワクチン開発はできていない。にもかかわらず、日本のワクチン接種率を大きく上回っている。それが、この2021年1~3月期のGDP成長率にも現れている。ワクチン接種が進んでいるアメリカや欧州は、大きくプラスに転じているにもかかわらず、日本はいまだに前年同期比で-5.1%とリーマンショックを下回る経済成長率しかない。
ワクチン接種の準備が遅かった
イギリスのオックスフォード大学などのグループが集計しているデータによると、5月10日時点で人口に占める1回目の接種を終えた人の割合は、イスラエル63%(NHKホームページより、以下同)、イギリス52%、アメリカ46%。日本はわずか2.91%で、世界で131番目となっている。発展途上国にも大きく遅れをとっているのが現状だ。
なぜ、これほどワクチン接種の開始が遅れたのか……。たとえば、イギリスは、昨年の夏にはワクチン接種の準備に取り掛かっていたと報道されている。菅政権の支持率がこうした報道で大きく下げたのはやむをえないにしても、8年も続いた安倍政権が、ほとんど何の準備もしなかったことが大きかったのではないか。他の国が、ワクチン接種に取り掛かっているときに、日本では呑気に「Go To トラベルキャンペーン」の準備にかかりきりだったとも言える。
海外で承認されたワクチンだからといってすぐに国内で認可されるものではない――という発想は、いってみれば「平時の発想」だ。しかし現在はコロナという「バンデミック=戦時下」にある。日本政府にはこうした「有事」の発想がなかったのかもしれない。「最悪の事態を想定して行動する」という有事の発想があれば、また違った展開があったはずだ。
ワクチン接種の準備が遅れたのはセキュリティーに対する意識が低かったといわれても仕方がないが、その後のワクチン接種のスタートでもさまざまな問題があった。予想された「混乱」や「トラブル」は、メディアも加担して大混乱となった。
自衛隊による大規模集団接種が始まった5月24日の新聞報道を見てみると、朝日新聞は「ワクチン予約サイト、プロが示す『最悪シナリオ』対処法」の中でワクチンの予約サイトがITのセキュリティーが弱く混乱に拍車をかけている。さらにサイバー攻撃の標的にされるのではないかと懸念も示している。
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