先の見えない状況が続く新型コロナウイルス感染。切り札として期待されているワクチンに関する報道で、見聞きする機会が増えたのが「アナフィラキシー」という言葉だ。ワクチンの副反応の一つだが、どんなメカニズムで症状が起こるのか。専門家に話を聞いた。
アナフィラキシーの症状とは?
「アナフィラキシーとは、アレルギー物質(アレルゲン)が体内に入った後、数分後から十数分以内に起こる過敏反応のことで、皮膚や粘膜、呼吸器や循環器など、複数の場所に同時に症状が表れるのが特徴です。このうち、急な血圧低下や意識障害が起こるものを、アナフィラキシー・ショックと呼びます」
こう話すのは、日本アレルギー学会「アナフィラキシー ガイドライン」を作成したAnaphylaxis対策特別委員会委員長(当時)で、国立病院機構相模原病院臨床研究センター・センター長の海老澤元宏さん。
ガイドラインによると、具体的な症状は発疹(じんましん)や赤み、かゆみ、唇やまぶたの浮腫、腹痛、嘔吐、喘鳴(ぜんめい・呼吸がゼーゼーする)、呼吸困難、血圧低下、意識障害など、実にさまざまだ。
また、さまざまなものが要因となる。
食品では、子どもに多いのが卵や牛乳で、年齢が上がると増えるのが小麦や甲殻類(カニなど)、ソバ、ピーナッツ、ナッツ類など。ハチに刺された後に起こる例もあり、抗菌薬や痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬)、抗がん剤などの医薬品も要因となる。
「医薬品に関しては、主体となる成分でアナフィラキシーが起こる場合もあれば、添加物で起こる場合もある。実際、新型コロナのワクチンのアレルギーでは、添加物で起こっている可能性が高いとされています」(海老澤さん)
ファイザー社のワクチン「コミナティ」やモデルナ社のワクチンが用いているm(メッセンジャー)RNAは、脂質で包まれた形で製品化されているが、この脂質であるポリエチレングリコール(PEG)がアナフィラキシーの要因といわれている。アストラゼネカ社のワクチンにはポリエチレングリコールは使われていないが、類似物質のポリソルベート80が添加物として入っている。
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