アナフィラキシーが怖い人に知ってほしい真実 コロナワクチン打った後にもしも起こったら?

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さらに放出された化学物質の作用により、気管支や腸管を取り囲む筋肉(平滑筋)が収縮する。呼吸が苦しくなるのはのどの粘膜がむくみ、気管支周囲の筋肉が収縮するためだ。腸管周囲の筋肉の収縮は腹痛や下痢の原因となる。

「実は、こうしたすべての症状を改善するのがアドレナリン製剤なのです」(浅野さん)

そのうえで、血管から漏れ出した血漿(水分)はすぐに血管内に戻らないため、減った血液量を補うために生理食塩水を点滴で入れることもある。また、ヒスタミンの作用を抑えるために、ヒスタミンH1受容体拮抗薬などを使うことも。アナフィラキシーより軽いアレルギー反応のときは、これだけですむ例もあるという。

さらに、高血圧や不整脈の治療で使うβ遮断薬には、アドレナリンの作用を阻害する働きがあるため、持病の治療でこうした薬を使っている人は、アドレナリン製剤の効果が十分に表れない場合もある。このときは別の薬(グルカゴン)を点滴して様子を見る。呼吸が苦しいときは酸素吸入をする。

「接種会場が体育館や公民館の場合、グルカゴンや酸素ボンベなどを準備するのは、現実的には難しいでしょう。そのときは近くの医療機関との連携で、初期対応で改善しなかったら速やかに搬送する対応がとられるはずです」(浅野さん)

抗ヒスタミン薬の服用に注意

「予防のために接種前にドラッグストアなどで市販されている抗ヒスタミン薬などを服用すればいいのでは?」と思う人もいるだろう。これについて「もともと持病の治療のために飲んでいる方以外は、事前に服用しないように」と答える。

「抗ヒスタミン薬を飲むと、アナフィラキシーの初期のサインである皮膚や粘膜の症状が表れにくくなる。重症化して呼吸器や循環器に症状が出るまで気付かない恐れがあります」

では、どういう人は気を付けたほうがよく、どういう人はアナフィラキシーを理由にワクチン接種できないのだろうか。

基本的に、接種する前には予防接種を安全に受けられるかどうか、必ず医師が接種する人に問診(予診)を行う。その際に医師が注視する病気の一つが気管支喘息だという。薬でコントロールできていたり、喘息発作がずっと起こっていなかったりする人は問題ないが、薬を使っても症状がコントロールできていない、あるいは喘息発作が頻繁に出る人は、注意が必要のようだ。

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