リベラルアーツ教育の最後に「進化論」を学ぶ意味 コロンビア大学教養講座が伝える「学びの核心」

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すべての学生は、専攻とは関係なく、最初の2年間で二千数百年前分の膨大な古典書を読むわけです。それも注釈書ではなく翻訳原書なので、まさに修行のような苦難の道です。

11の“コア・クエスチョン”

コロンビア大学のリベラルアーツの教員は、学生に対して以下の11の“コア・クエスチョン”を投げかけるのがつねです。

・階級や格差とは何か、なぜ存在するのか
・自由民とは何か、非自由民とは何か[例:女性や使用人、奴隷]
・家政術や公共の政治とは何か。共同体の種類で特質は変わるのか
・逸話や修辞が持つパワーとは何か。歴史においてどのように作用したのか
・真実を見抜くことはできるのか。「認識」や「勘考」とは何か
・「人間」であることは先天的なのか、あるいは後天的に作り上げられるべきものなのか
・性別による差異はどうか。どこまでが先天的で、どこからが後天的に作り上げられるものなのか
・正しいこと、公正であること、美徳を有すること、それらははたして何なのか。必要なのか、邪魔なのか、役に立つのか、立たないのか
・苦労すること、困難に立ち向かうこと、失敗に直面すること。それらは人生に何か「善」なるものをもたらすのか
・真実とは、真実在とは何か。目には見えない明らかでないものを理性の力で観ることは可能なのか
・真実とは、感ずるものなのか、理性により認識するものなのか。それは協調や友愛にあるのか、紛争や不和なのか

学生たちは、これらの問題意識をつねに持ちながら、先人たちが遺した古典書を読んでいくのです。実際の授業では、ホメロスの『叙事詩』、ヘロドトスの『歴史』、トゥキュディデスの『戦史』につづられた古代ギリシャの歴史から出発します。それからプラトンとアリストテレスの哲学をはじめ、古代ギリシャで開花した文明・文化、それがオリエント文明と結びついて生まれた「ヘレニズム」について学びます。

そのうえで、後のローマ帝国やユダヤ教(ヘブライ聖書)から生まれたローマカトリック(新約聖書)の時代、アジアに誕生したイスラム教(コーラン)、中世のルネサンスの時代、宗教革命の時代、科学の誕生、近代政治哲学や革命思想の台頭と、時代ごとの著作を読み進んでいきます。

そして、コロンビア大学のリベラルアーツのカリキュラムにおいて、最後に読むのはイギリスの地質学者チャールズ・ダーウィンが1859年に著した『種の起源』です。同書が「進化論」について述べた大著であることは有名でしょう。

ここまで政治や経済、哲学、宗教など社会に関連する書籍が中心だったので、いきなり自然科学の生物学が登場することは奇異に映るかもしれません。しかし、これには理由があります。

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