米国エリート教育と第1次世界大戦の深い関係 GAFAがリベラルアーツ教育を重視する理由

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エリートが学ぶリベラルアーツとはどのような学問なのか?(写真:Big Bang Babe/PIXTA)
なぜ、欧米の名門大学ではリベラルアーツ教育を重視するのか。米国エリート教育の原点はどこにあるのか。『教養としてのギリシャ・ローマ:名門コロンビア大学で学んだリベラルアーツの真髄』を上梓した中村聡一氏が解説する。

リベラルアーツと大学の起源

なぜ最高学府である大学教育において、リベラルアーツはそこまで重視されるのでしょうか。

『教養としてのギリシャ・ローマ:名門コロンビア大学で学んだリベラルアーツの真髄』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

その要因の1つは、欧米の大学の起源にあります。12世紀の十字軍遠征の時代、拠点だったイタリアには、戦利品としてアラビア地域から古代ギリシャ学問の文献が大量に持ち込まれました。その翻訳作業を担うために発足した知識階層の組合が、今日の大学の前身と言われています。こういう組合は、やがてヨーロッパ各地で設立されるようになりました。

古代ギリシャ学問の領域は、自然学、天文学、修辞学、論理学、数学、幾何学、哲学、建築や造船、芸術の分野など多岐にわたります。「ヘレニズム」と呼ばれるこれらがリベラルアーツの起源であり、その古典学問を再発見することで起こった一大ムーブメントが、いわゆる「ルネサンス(文芸復興)」です。

それまでのヨーロッパは、「暗黒時代」と呼ばれるほど破壊と略奪が数世紀にわたって繰り返され、荒廃しきっていました。そこからの復活をかけ、キリスト教の神学哲学にプラトンやアリストテレスをはじめとするヘレニズムの思想を取り入れたことがルネサンスの意義なのです。

その旗振り役が大学であり、結果としてヨーロッパは暗黒時代を脱し、現在のグローバル世界の中核に位置する価値体系が誕生しました。つまりリベラルアーツこそ欧米の大学の出発点であり、復興の救世主だったわけです。

その後、大航海時代の新大陸発見により、世界は地中海中心から大西洋・太平洋の二大洋の時代となり、やがてアメリカが世界のリーダーとして躍り出ます。そのアメリカで開発された教育プログラムが「リベラルアーツ」でした。ヨーロッパ社会が「ヘレニズム」の再発見で暗黒時代を乗り越え、現在の繁栄を築いたように、個々の学生にも知の強さを身に付けさせることが狙いです。

とくにエリート大学群において、リベラルアーツは学部教育の根幹として位置づけられています。特定の学問領域を専攻する前提として、すべての学部生が習得すべき“Core(本質)”とされているのです。

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