米国エリート教育と第1次世界大戦の深い関係 GAFAがリベラルアーツ教育を重視する理由
1914年に始まった第1次世界大戦は、神聖ローマ帝国崩壊後のドイツ、オーストリア=ハンガリー帝国や、オスマン帝国、ブルガリアという古参の秩序を保った国家と、大航海時代を経て大きく台頭したイギリス・フランスを中心とする西ヨーロッパ諸国との対立の図式でした。
形勢が大きく傾いたのは1917年。アメリカの参戦により、西ヨーロッパ諸国側が勝利を収めました。これを契機として、世界秩序は西ヨーロッパ諸国主導、さらにアメリカ主導へと大きく塗り替えられていきます。それに伴い、長く世界の中心だった地中海は、その地位をアメリカ両岸に位置する太平洋・大西洋に譲りました。
教育プログラムとしての「リベラルアーツ」
実は同年、アメリカではもう1つ、まったく地味ながら大きな変化が起きていました。大学におけるアメリカ式リベラルアーツ教育の開発です。それは、第1次世界大戦と無縁ではありません。参戦に際し、アメリカ陸軍がコロンビア大学に対して陸軍士官への教育プログラムの開発を要請したのです。
建国以来、アメリカはヨーロッパと一定の距離を置き、孤立主義を貫いてきました。しかし大戦への参戦は、その方針を撤回し、世界政治の中心に躍り出ることを意味します。だとすれば、アメリカとしてよって立つべき理念や哲学を確立し、世界に向けてその真価を証明していく必要がある。そのための教育が急務だったわけです。
その結果、誕生したのが“war issues(戦時問題/筆者意訳・以下同)”と銘打たれた教育プログラムです。また1919年には、戦争終結を受けて“peace issues(平和問題)”というプログラムも登場。これは後に、“Contemporary Civilization(現代文明論)”という授業に統合されました。
さらに翌1920年には、いっさいの注釈書を用いず、古典の英訳原文を読ませるスタイルの授業も発足しました。もちろん、単に古典として読み解くだけではありません。学生は週に1冊のペースで古典を読み、指導教授と面談を行うまでがワンセットです。ただし、もともと少人数だったコロンビア大学の学生の中でも、えりすぐりのエリートしか受講できなかったそうです。
これは後に、“Literature Humanities(文学人類論)”という授業に発展します。この2つの授業を出発点として、「アメリカ式リベラルアーツ」と呼ばれる教育システムが構築されていったわけです。
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