米国エリート教育と第1次世界大戦の深い関係 GAFAがリベラルアーツ教育を重視する理由

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もちろん、いずれも単に知識を修得することが目的ではありません。まずその成り立ちや仕組み、生まれた背景、社会との関わりや人類に与えた影響まで含めて考察すること。またそれによって、私たちが生きるうえで何が「善」や「徳」なのか、という価値基準の土台を作ることが大事なのです。

GAFAがリベラルアーツを重視する理由

ここに、アマゾンやグーグルなどの有力企業がリベラルアーツ教育を重視する理由があります。

プラトン、アリストテレスが生きた時代のギリシャでは、「正義とは強者の利益である」という風潮が蔓延していました。しかし彼らは、「正義や美徳とはそれ自体が尊ぶべきものであり、その認識を定着させることを国家運営の根本原理にすべきである」と主張したのです。

これは今から2400年も前の話ですが、こうした彼らの思想は、やがて形を変えてキリスト教と合体し、神の言葉となりました。また近代政治哲学においては、「幸福を追求する権利」として先進自由国家の憲法の土台にもなっています。

哲学を哲学としてだけではなく、歴史を歴史としてだけではなく、もっと有機的に組み合わせ、「人間とは何か」「どう生きるべきか」「どう社会に貢献すべきか」という根源的・普遍的な問いについて学ばせるのがアメリカ型のリベラルアーツ教育です。それが目指すところは、世界中のどこでも、あるいは政治、ビジネス、サイエンスなどあらゆる分野において能力を発揮できる人間を育てることなのです。

中村 聡一 政治哲学者/リベラルアーツ教育研究者

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なかむら そういち / Soichi Nakamura

コロンビア大学の学部課程を優等の成績で卒業。その後、コロンビア大学・グローバル政策大学院にてファイナンスを専攻。KPMGのパートナー等を経て、現在は、甲南大学にて政治哲学やリベラルアーツを教える。著書に『企業買収の焦点 M&Aが日本を動かす』(講談社現代新書)、『教養としてのギリシャ・ローマ 名門コロンビア大学で学んだリベラルアーツの真髄』(東洋経済新報社)などがある。

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