「余暇」の重要性を説いたアリストテレスの慧眼 古代ギリシャの「治乱興亡の歴史」に学ぶ教訓
158の植民国を徹底的に調査
アリストテレスの代表作として知られる『政治学』の大きな特徴は、単なる「論」ではないということです。当時存在したギリシャ系の158の植民国をすべて回り、それぞれの国政を調べた結果としてまとめたものが同書です。
ちなみに現在の国連加盟国は193カ国。地理的な規模はまったく違いますが、当時としては世界中の国政を調べ尽くすほどの感覚だったのかもしれません。
アリストテレスは、それを大きく3形態に分類しました。1人の個人に権力を集中させる「独裁制」、特定のエリート層だけが権利を持つ「寡頭制」、そして国民すべてが平等に関与する権利を持つ「民主制」です。
特徴的なのは、独裁制だから悪、民主制だか善という判断はしていないことです。現代人の感覚では、民主制は独裁制や寡頭制より優れていると考えがちですが、アリストテレスは必ずしもそうは捉えていません。それはペロポネソス戦争当時、衆愚に陥って迷走したアテナイが念頭にあったからでしょう。
彼はよき政治を実現するには、次の2つの点が大事だと言っています。第1は、その政治が目指すものは何かということ。「国家」や「公」のためか、それとも「私」の利益のためかということです。前者が理想形であり、後者がその堕落した形であることは言うまでもありません。
第2は、国民のあり方です。アリストテレス曰(いわ)く、ポイントは大きく2つあって、1つは貧富の格差の度合い。これが大きいほど、「よき政治」から遠ざかります。途上国の多くは、少数の富裕層と大多数の貧困層で構成されます。だから政治は不安定で流動的になりやすい。
一方、成熟した大国では、中間層の割合が高くなります。彼らはぜいたくはできないものの安定した生活を手に入れているため、政治にも安定を望みます。したがって国家も安定しやすくなります。
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