神なのに人間臭い「ギリシャ神話」凄い権力闘争 主神ゼウスが世界制覇するまでの紆余曲折
カオスから最初にあらわれたのは大地
始めにカオスありき。
ヘロドトスの『神統記』の記すところでは、最初の存在はカオスであり、そのあと色々なものが生じている。だが、ここで、「なるほど、混沌(カオス)の中から秩序(コスモス)が生まれたのか」と思うのは、どうやら早とちりであるようだ。ここでのカオスは混沌の意味ではない。ギリシャ創世神話のカオスはカラッポを意味する。英語chasmはクレバスのような割れ目を指すが、chaosはそのようなぱっくりと空いた空虚を指す。
というわけで、宇宙史の出発点にあったのはカラッポであった。まあ、一種の無からの創造だ。ただし、世界の外にいる絶対神のようなものが無から有への創造を行なったのではない。おのずから自然物が誕生し始めたのである。
最初に現れたのは大地である。ギリシャ語でガイア。そしてこのガイアは女性名詞なので女神ということになった。ガイアはゲーとも言うが、geology(地質学)やgeography(地理学)に含まれているge-はこれに由来する。
大地の底にあるタルタロス(どん底)もまた生まれた。このどん底はキリスト教などの地獄とは異なり、懲罰の監獄ではない。また、ハデスのいわゆる冥界とも違う。ただ、地下のとんでもない深くにある暗闇というだけだ。男性名詞であるから、男の神様ということになる。
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