神なのに人間臭い「ギリシャ神話」凄い権力闘争 主神ゼウスが世界制覇するまでの紆余曲折

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ウラノスは妻の生んだ怪物たちを疎んじて、大地のどん底のタルタロスに押し込んでしまう。しかし、母親ガイアは「なんということをしてくれたのです!」と怒りの声を上げる。どうやら、秩序やタテマエを好む天の神が怪物めいたものを嫌うのに対して、大地は清いも穢いもなくすべてを受け入れるということらしい。あるいはもっと単純に受け取れば、母親にとって我が子はどれもかわいいということだろう。

ガイアは巨大な鎌を持ち出し、息子たちに「あなたたちのお父さんにこれで復讐してちょうだい」とけしかける。みなが尻込みする中、「僕がやります!」と言ったのは、長男ではなく末っ子のクロノスであった。

旧約聖書でも古事記などでもそうだが、頭角を現すのは兄弟の中でも下のほうと決まっている(たとえば兄神たちの荷物持ちをやらされていたオホナムヂの神が将来地上の帝王「大国主」となった)。

で、クロノスがどうやって父をやっつけたかというと……ウラノスが妻のガイアにセックスを挑んだとき、母の傍らで身を潜めていたクロノスがさっと躍り出て、例の鎌で父の陽物(ようぶつ)を切ってしまったのだ。

で、まあ、男のシンボルを失うことでウラノスは権威を失い――あからさまに権力の本質を描いている?――、クロノス世代すなわちティタンたちの時代がやってきたのである。なお、ギリシャ神話の政権交代ドラマは東方の現トルコ地域に古代に住んでいたヒッタイト人の神話の影響を受けていると言われる。

クロノスの末っ子がゼウス

さて、クロノスは姉のレアと結ばれて、次々と子供をつくる。第3世代の顔ぶれは、女神ヘスティア、ヘラ、デメテルと男神ハデス、ポセイドン、ゼウスである。そしてこの末っ子のゼウスが、再び「父の権力を奪う息子」の役を果たすことになる。

今度はどういういきさつであったか?

自ら父の権力を奪ったクロノスは、自分の子供に同じ目にあわされることを恐れて、赤ん坊が生まれるたびに果物のようにぽんぽんと呑み込んで腹の中に収めた。そしてこれが妻レアの恨みを買うことになる。

彼女はゼウスが生まれたとき、この男の赤ん坊をクレタ島にかくまい、夫には産着でくるんだ岩を渡したのであった。クロノスは岩を一呑みして、事は片付いたと思った。

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