神なのに人間臭い「ギリシャ神話」凄い権力闘争 主神ゼウスが世界制覇するまでの紆余曲折
さて、ここで一つ異質なものが生まれる。抽象的な力かエネルギー、あるいは作用のようなものだ。その作用とは、エロス(愛)である。単なる色恋沙汰としてのエロスよりも、もっと抽象度の高い概念である。物と物を結びつける原理と言ったらいいだろうか。物と物を結びつけるから、もちろん恋人同士も結びつける。
で、このエロスはやはり男性名詞だったので、男の神様ということになる。ギリシャ人のイメージでは美少年だ。神話の世界は自然物が擬人化される世界であるから、大地とか奈落とか天のような自然物も、この若い縁結びの神エロスの働きでセックスの衝動を覚えて、相互に交わって新たな何物かを生み出すことになる。
ガイアから単性生殖で生まれたウラノス
さて、ガイアはまず単性生殖で男神ウラノスを生む。ガイアが普通名詞の「大地」であるように、ウラノスは普通名詞の「天空」である。そしてガイアとウラノスは、今度はエロスの働きによって、有性生殖で(つまり近親相姦で!)、神々を生み出していく。
生まれた神々の名は、クロノス(豊穣神らしい)、レア(大地母神のようだ)、オケアノス(世界の外周にあるという水の神格化)、イアペトス(後世古臭い老人の代名詞となった男神)、テミス(掟の女神)、ムネモシュネ(記憶の女神)などなどである。
これら兄弟姉妹をまとめてティタンと呼ぶ(英語読みはタイタン)。巨人的な大きさの神々だったらしいが、巨船タイタニック号の名前のもとである。ちなみにタイタニック号の姉妹船がオリンピック号で、このオリンピックとはオリュンポスに由来する。
ウラノスは天空神なのだから、大地よりあとから生まれたとはいえ、最高神的な位置にあることになる。なにせ古代社会は男尊女卑的な家父長支配だったのだから、そうなるのがお約束だ。そして彼の子供たちティタンのうちの男性神は、どうしても帝王たる父の位を狙う位置にあることになる。実際、父の権力は息子クロノスによって奪われた。
この世代交代のいきさつを述べるとしよう。
クロノスたちの母である女神ガイアは、次に恐ろしい怪物を生み出す。額の真ん中のただ一つの丸い目を持つキュクロプス(「丸い目」)という巨人(巨神というべき?)が3体、50の頭と100の腕を持つヘカトンケイル(「百の手」)という巨人が3体だ。
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