コロナで露呈「正しく数字を扱えない」日本の弱点 「プロセス」軽視で「結果」ばかり重視の危うさ
コロナとは直接関係ないが、統計の第一歩として必ず登場する「平均値」と「中央値」の違いを納得できる、生きた事例を最後に挙げよう。
参考までに中央値とは、いくつかのデータを小さい方から順に並べたときの中央にある数のことで、データ数が偶数の場合は、中央値は真ん中にある2つの数の平均値になる。
事務局が日本銀行情報サービス局に置かれている金融広報委員会の報告「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和元年)」によると、60歳代の二人以上世帯の金融資産保有額の平均値は2203万円となっている。
このようなニュースが流れる度に、あちこちの60歳代の二人以上世帯では、次のようなぼやき声が家庭内で出るようである。「私たち世代の夫婦の平均貯蓄額は約2200万円だから、私たちの約1200万円は少数貧困派よ」。
平均値と中央値で比較すると
しかし、次の11個のデータの例によって平均値と中央値を見てみよう。
平均値=上記の数の和÷11=55÷11=5
となる一方で、中央値は真ん中にある3である。実際、冒頭に挙げた「家計の金融行動に関する世論調査[2人以上世帯調査](令和元年)」によると、60歳代の2人以上世帯の金融資産保有額の中央値は1200万円となっている。
したがって、上で紹介したぼやき声があったご家庭は、ちょうど“中央値”の家庭なのである。このように、生きた題材から数的論理の第一歩を学ぶと、多くの人たちもついてくると考える。
だからこそ、昨年末に出版した『AI時代に生きる数学力の鍛え方』(東洋経済新報社)で、「理解無視の暗記の数学学習」に警告を発する一方で、算数から高校数学+αまで生きた題材で学ぶ応用例を数多く紹介したのである。身近な事例を通して、数的論理の考え方・捉え方に変化が表れることを期待したい。
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