歴史の奥深い「ヒップホップ」若者が虜になる背景 「ラップ」との厳密な違いを説明できますか?

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ヒップホップの歴史を解説します(写真:Geber86/iStock)
ブラック・ミュージックは歴史的に見て、差別に対する怒りを和らげ、また、怒りを表明するものという側面があります。それは20世紀を締めくくるように出現したヒップホップも同様です。YouTube「みのミュージック」で音楽批評を行うみの氏が、ヒップホップの誕生と変遷を解説します。
前回:「プレスリー」「ビートルズ」は結局何が凄いのか
前々回:音楽通以外も知ってほしい「黒人と歌」の苦闘史

人々の間で自然発生的に生まれたジャンル

ブルース、R&B、ロック、ファンク、ディスコなどを広義の“ポップス”と捉えるなら、20世紀のポップス史はブラック・ミュージックの歴史と言えます。これらのルーツを探ると、17世紀にアフリカ大陸から奴隷として強制移住させられたアフリカン・アメリカンの労働歌に辿り着くからです。

ブラック・ミュージックの中でも、突然変異的な形で現れた「ヒップホップ」は、ブルースなどのように人々の間で自然発生的に生まれた音楽ジャンルです。

ニューヨークのブロンクス地区では、ユダヤ系、イタリア系、アイルランド系の移民たちが多く暮らしていましたが、1950年代から1960年代にかけて、彼らは郊外へと移動します。かわりに住み始めたのは、アフリカン・アメリカンたちとジャマイカからの移民、プエルトリコ、ドミニカをはじめとするラティーノたちです。

1970年代、この地区の失業率は60%近くに上り、治安が非常に悪くなります。当時はディスコの最盛期でしたが、クラブに行けない貧困層の若者たちは、公民館や公園のバスケットコートのようなところで、「ブロック・パーティー」と呼ばれる内輪的なイベントをやるようになります。

彼らは、移動式の巨大スピーカーのセットに、アンプ、ターンテーブルを備えた野外イベント用の音響設備「サウンド・システム」で音楽をかけて踊っていました。

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