車椅子が「かっこいい乗り物」へと変わる理由 「企業と生活者が共に紡ぐ物語」の脚本づくり

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ナラティブスクリプトの導入部分では、世の中を大きく捉えた事象や文脈が欠かせない。ナラティブの舞台は社会であるべきだからだ。決して、競合環境や開発背景など、自社都合の話から始めてはいけない。社会ではどのようなことが起きていて、そこにどんな課題があるのか、の提示が重要になる。

WHILLでは、「生活不活発病」「フレイル」といった、長寿国日本で顕在化している社会課題から入りつつ、「そこに実は明確なガイドラインがない」と、もう一歩深い課題に踏み込んでいる。

そして、次のパートで、「社会的活動範囲」という新たな概念を提示することで、解決策の示唆へとつなげるとともに、ここで初めて、「登場人物の一人」である企業ブランドの登場になる。

ここでのポイントは、前提とした社会課題に対して、「なぜその企業(ブランド)は関与できるのか?」ということに尽きる。企業がやりたいかどうかは問題ではなく、「客観性」が大事だ。WHILLでは、車椅子にはない操作性やデザインがそれにあたる。また、「歩行との組み合わせ」により、より探究心と好奇心を満たせるという提案も重ねている。

ここで注目される新たな発想が「社会的活動範囲」と呼ばれるものだ。「社会的活動範囲は、「距離×時間×情報×発見」の総量で規定される。…(中略)…ここで期待がかかるのが、歩行と「電動車椅子」を組み合わせた「外出ライフ」だ。安全に散歩ができる場所までの移動のための併用使用や、歩きでいけなかった先にある場所でのコミュニケーションなど可能性は広がる。なかでも優れたデザイン性と機能で知られる「WHILL」の人気が高まりつつある。

最後に「未来のステークホルダー体験」

最後のパートは「未来」についてだ。現在進行形で終わりがないのがナラティブ。スクリプトの最後に必要なのは、「未来のステークホルダー体験」だ。未来のことだから妄想でかまわないが、ポイントはできるだけ「具体的に」描くことだ。「革新的な世界へ貢献する」「より良い社会が実現している」などの、抽象的な美辞麗句では意味がない。

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