新型コロナウイルスが高齢者にとって危険な理由は、感染したときの重症化や死亡リスクが高いということだけではない。4月以降のさまざまな行動自粛が、高齢者の心身に深刻な状況をもたらしつつある――。
名古屋市に住む74歳の小林義人さん(仮名)は、妻と長男の3人で暮らしている。過去にがんを患ったこともあって、コロナ禍の4月以降、「外出するのが怖い」と、ほぼ家に閉じこもって外に出ていない。デイサービス(通所介護)もずっと休んでいる状態だ。
引きこもりによる体力低下でおむつが必要に
外出する恐怖と、昼間に動かなくなったことで食欲がなくなり、体力が低下。ベッドから起きて歩いてトイレに行くことも難しくなったため、おむつが必要になった。数年前に軽い認知症があると診断されていたが、朝晩の感覚が薄れて夕方に起き出すなど、認知機能の低下も進んでしまった。
こうした小林さんの様子を心配した家族が、担当のケアマネジャー(介護支援専門員)に相談し、要介護度を見直したところ、「要支援2」から「要介護1」に。これは
ところから
に変わったことになる。
「実はいま、急に生活機能が落ちて、要介護度が変わるケースが増えています」
こう話すのは、名古屋市緑区の居宅介護支援事業所「でんじやま」でケアマネジャーをしている、水野勝仁さんだ。
要介護度は軽度の要支援1から重度の要介護5まで7段階に分かれていて、一定の期間(6カ月~3年)で見直されるのが一般的だ。一方で、急に健康状態が悪くなった人については、これとは別に要介護度を変更できる。
「緑区では、今年6月の要介護度の区分変更をした人が例年より250人ほど多かった。それだけでなく、要介護度が2段階以上、変わる人も何人かいました。こうしたケースはこれまでほとんどなく、深刻さを痛感しました」(水野さん)
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