コロナ禍で「老化が進む人」が激増しかねない訳 感染恐れて外出減り体力・食欲・気力が低下

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そして、フレイルを予防するもう1つのカギが、“人との触れ合い”だ。筋肉の衰えとコミュニケーションは一見関係ないように思えるが、そうではない。先の飯島さんらが行った調査では、運動をしっかりやっていても、人とのつながり(文化活動やボランティア・地域活動)がないと、フレイルのリスクが上がることが明らかになった。

人と触れ合うことの重要性については、前出の水野さんも話している。

「デイサービスが休業している間、食事や排泄、入浴を代替サービスで補えば何とかなると思っていました。しかし、それだけを補っても健康状態が悪化してしまう高齢者が少なくありませんでした。1日のリズムを作ったり、人とのコミュニケーションの場となったりするデイサービスの役割の大きさを痛感しました」

地域によっても違うだろうが、デイサービスは再開されたものの、地域の集まりやボランティアなど、社会参加活動の場が減っている。また、そうした集まりがあっても、感染が怖いからと家に閉じこもっている高齢者も少なくない。大内さんはいう。

コロナ禍でも社会とのつながり、人との触れ合いを

「今、考えなければならないのが、コロナ禍でも社会とつながれる、人と触れ合えるという場を持つということ。例えば、家族や友人との交流を深めてみるのも1つ。たわいもないおしゃべりでも不安が和らぎ、気持ちの落ち込みを予防できます」

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その際にポイントとなるのがITだ。厚生労働省は6月、介護事業所に対してタブレットなどのICT機器の購入またはリース費用を支援することを明らかにした。介護事業所のなかには、すでに利用者とオンラインでつながり、運動や会話でサポートする支援を行っているところもある。

「若い人たちがオンライン飲み会で楽しみを見つけたように、高齢者もITを活用して新たに人とのつながり方をつくっていくことが大切です。そのためには技術の進歩が必要で、ITが苦手な高齢者でも簡単に操作できる技術をすぐにでも開発してほしい」

高齢者の要介護度の進行は、介護業界の逼迫や、社会保障費の増大につながる。何より、今まで元気だったおじいちゃん、おばあちゃんが、コロナの感染は免れたけれど、寝たきりになってしまった、では悲しすぎる。社会が、家族が、1人ひとりが、感染予防だけでなく、フレイル対策を行っていかなければならない。

鈴木 理香子 フリーライター

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すずき りかこ / Rikako Suzuki

TVの番組制作会社勤務などを経て、フリーに。現在は、看護師向けの専門雑誌や企業の健康・医療情報サイトなどを中心に、健康・医療・福祉にかかわる記事を執筆。今はホットヨガにはまり中。汗をかいて代謝がよくなったせいか、長年苦しんでいた花粉症が改善した(個人の見解です)。

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