コロナ禍で「老化が進む人」が激増しかねない訳

感染恐れて外出減り体力・食欲・気力が低下

水野さんの事業所がある名古屋市緑区では、今年2月末、隣接する南区と共に日本で初めてデイサービスでクラスターが発生。63人が感染し、うち12人が亡くなっている。当時の状況を水野さんはこう振り返る。

「緑区内の病院で感染が判明した利用者さんが、デイサービスを利用していたことから、感染が広がりました。デイサービスの利用者さんだけでなく、その家族も感染して亡くなっています。名古屋市から通所系介護サービスの事業所に対して休業要請が出され、高齢者は外出を控えるよう求められました」

【2020年8月17日7時27分追記】初出時、水野さんの上記コメントに事実と異なる部分がありましたので修正しました。

デイサービスは食事や排泄、入浴といった日常生活を支援する場所だけでなく、利用者同士が交流する場でもある。

「コロナフレイル」の実態が明らかに

この自粛要請期間中に、高齢者の健康状態の悪化を目の当たりにした水野さんは、大阪経済大学人間科学部教授の髙井逸史さん(理学療法士)と共同で調査を実施。緑区と大阪・堺市でデイサービスを利用している高齢者の心身の状態が、4月7日の緊急事態宣言前と後でどう変わったかを調べた(調査期間は5月10日~31日)。

その結果、緑区の高齢者148人(平均年齢82.7歳)では、宣言前より「外出頻度が減った」が77%、「食事量が減った」が17%、「転倒不安が増えた」が46%、「もの忘れが増えた」が36%、「疲れたような感じがする」が34%だった。対して、堺市(257人・平均年齢80.7歳)も同じ傾向だったものの、「食事量が減った」「疲れたような感じ」が少なかった。

「緑区は、日本初のクラスターだったことや、身内や知り合いが感染で亡くなっている。この事実が、より抑うつ状態を悪くさせたと考えています」(水野さん)

髙井さんは併せて、堺市の高齢者573人(平均年齢81.8歳)について、デイサービス利用を「控えた群(257人)」と「通った群(316人)」で比較。すると、「転倒不安が増えた」で約6倍、「認知機能低下」で約11倍も控えた群のほうが高くなっていた。

堺市と緑区の両方で専門職へのヒアリングを行った髙井さんは、コロナ禍の外出自粛による高齢者の健康状態の悪化を「コロナフレイル」と捉え、こう呼びかける。

「下半身の筋力の低下が思った以上にありましたが、これは自粛中の個人の取り組みや、デイサービスを再開したときの運動などを通じて、維持や改善が期待できるかもしれません。一方、認知機能を取り戻すのは難しい。第2波に備えて、どういう対策が必要なのかみんなで考えていく必要があります」

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