車椅子が「かっこいい乗り物」へと変わる理由 「企業と生活者が共に紡ぐ物語」の脚本づくり
しかし、そのための対策を調べても、とにかく運動しなさい、社会参加しなさいというアドバイスばかりで、もう一歩踏み込んだ具体的な対策は見つからなかった。では、そこにWHILLが介在するナラティブをつくって世の中に出していくことで、WHILLへの見方(=パーセプション)を変えていけるのではないだろうか?
パーセプションの変容へ至るストーリーは、社会的な生活不活発対策を「世の中ごと」にすることで、WHILLの利用は「加齢によるエイジングイベント(老眼鏡や車椅子)ではない」というメッセージを出し、「自分の意思で動き回れる」というベネフィットに到達させること。ベネフィットを提示しなければ、本人にも子世代にも興味を持ってもらえず、WHILLの意義も伝わらない。
ナラティブスクリプトを作成する
こうしたプロセスを経て、ナラティブスクリプトを作成していく。
意図的にナラティブを生み出し、維持していくなら、何らかの道標や設計図も必要になる。その役割を果たすのが「ナラティブスクリプト」だ。文字どおり、ナラティブの「脚本」である。
ここで重要なのは、ナラティブスクリプト自体がどこかに掲出されたり、人の目に触れたりするものではないということ。あくまで、「われわれがつくりたいのはこういう物語構造だ」「この物語構造の中で、商品企画や広告やPRなどの施策を展開していこう」という、像合わせと合意形成が目的だ。
言ってみれば「内部資料」にすぎない。内部資料なので、そこに演出や表現の工夫はいらない。A4用紙1枚― およそ1000文字から1500文字ほどに収まるくらいでよい。
まずはナラティブのタイトルを設定しよう。ブランド名や商品名はナラティブタイトルにはなりえない。WHILLは、「社会的活動範囲」という言葉を〝作って〟キーワードにした。
タイトルは、「WHILL 『社会的活動範囲』を守る新ライフスタイル」。
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