車椅子が「かっこいい乗り物」へと変わる理由 「企業と生活者が共に紡ぐ物語」の脚本づくり

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このスクリプトでは、ユーザーからの具体的なコメントの記述が、未来の顧客体験を表している。また、「ソーシャルディスタンシング浸透による社会的活動範囲への関心の高まり」という具体的な社会認識変化の記述もそれにあたる。

「”すべての人の移動を楽しくスマートにする”がWHILLのミッションです。…(中略)…「最近、歩くのはしんどいけれど、周りに気も遣わずWHILLで人生謳歌しているよ」「外出機会が減る心配と、遠出は危ないのではという心配のジレンマが解消されましたね」とユーザーやその子ども世代の評価も高い。…(中略)…「ソーシャルディスタンシング」は世界的に浸透。世界中で「社会的活動範囲への浸透」への関心は高まっている。

こうして策定したスクリプトをベースに、施策が決定され、実行されていくことになる。

文章で書くのがシンプルかつ有効

物語の演出のポイントは、ナラティブ的に脅しすぎてはいけないこと。恐怖心をあおるのではなく、対象のインサイトをくすぐる内容にするべきである。WHILLの場合、ターゲットであるアクティブシニアのインサイトは、楽しめる、楽しみたい、だ。まだカッコよくいたいし、元気でいたい。このトーンが必要なのだ。

なお、WHILLのナラティブを描く途中で世界はコロナ禍に見舞われた。新型コロナの影響で外出や社会との関わりが減っているシニアをサポートするためにWHILLは、フレイルを予防するヒントをまとめた「ソーシャル・エイジ向上アイデア」も公開している。

社会的活動範囲は老齢の両親の話だけでなく、実は現役世代にも関係ある話にすることができる。ナラティブは社会状況に合わせる必要があるが、これはその好例と言える。

ストーリーの上位概念であるナラティブの定義は、「物語的な共創構造」である。ナラティブは、「可視化するのが難しい」という問題がある。例えば、ブランドストーリーを伝えるには「動画」は有効な手段かもしれないが、ナラティブを動画化するのは難しい。

その企業やブランドにとって理想的なナラティブを文章で表現する。はるか昔、あらゆる物語が、「文字」という表現方法によって広まったように、ナラティブは文章で書くのが最もシンプルかつ有効である。

本田 哲也 本田事務所代表取締役、PRストラテジスト

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ほんだ てつや / Tetsuya Honda

「世界でもっとも影響力のあるPR プロフェッショナル 300 人」に 『PRWEEK』 誌により選出されている。「PRWeek Awards 2015」にて「PR Professional of the Year」受賞。1999年に世界最大規模のPR会社フライシュマン・ヒラードの日本法人に入社。2006年ブルーカレント・ジャパン代表。2019年より現職。著書に『戦略PR 世論で売る。』(アスキー新書)、『その1人が30万人を動かす!』(東洋経済新報社)など。国連機関のアドバイザーなどを歴任。世界最大の広告祭カンヌライオンズで公式スピーカーや審査員を務めている。公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会(PRSJ)理事。

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