車椅子が「かっこいい乗り物」へと変わる理由 「企業と生活者が共に紡ぐ物語」の脚本づくり
このスクリプトでは、ユーザーからの具体的なコメントの記述が、未来の顧客体験を表している。また、「ソーシャルディスタンシング浸透による社会的活動範囲への関心の高まり」という具体的な社会認識変化の記述もそれにあたる。
こうして策定したスクリプトをベースに、施策が決定され、実行されていくことになる。
文章で書くのがシンプルかつ有効
物語の演出のポイントは、ナラティブ的に脅しすぎてはいけないこと。恐怖心をあおるのではなく、対象のインサイトをくすぐる内容にするべきである。WHILLの場合、ターゲットであるアクティブシニアのインサイトは、楽しめる、楽しみたい、だ。まだカッコよくいたいし、元気でいたい。このトーンが必要なのだ。
なお、WHILLのナラティブを描く途中で世界はコロナ禍に見舞われた。新型コロナの影響で外出や社会との関わりが減っているシニアをサポートするためにWHILLは、フレイルを予防するヒントをまとめた「ソーシャル・エイジ向上アイデア」も公開している。
社会的活動範囲は老齢の両親の話だけでなく、実は現役世代にも関係ある話にすることができる。ナラティブは社会状況に合わせる必要があるが、これはその好例と言える。
ストーリーの上位概念であるナラティブの定義は、「物語的な共創構造」である。ナラティブは、「可視化するのが難しい」という問題がある。例えば、ブランドストーリーを伝えるには「動画」は有効な手段かもしれないが、ナラティブを動画化するのは難しい。
その企業やブランドにとって理想的なナラティブを文章で表現する。はるか昔、あらゆる物語が、「文字」という表現方法によって広まったように、ナラティブは文章で書くのが最もシンプルかつ有効である。
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