スタバコラボ店舗の「マリトッツォ」超話題のワケ 無名の「プリンチ」がなぜ単独で開店できたのか
ところが、プリンチのマリトッツォではそれがない。パンをかじると瞬時にクリームに到達することができ、さらに口の中でクリームが溶けるのと同じタイミングでパンも消えていく。パンとクリームが一体化した印象が最後まで続き、軽いあと口を残す。
このこだわりに、ほとんどの人は気づかないかもしれない。しかし生クリームと同じ軽さ、やわらかさにパンを焼きあげるために、幾度も試作を重ねたであろうことが推測できる。
本場の貫禄を感じさせる、パン生地へのこだわり
今は“ばえる”が売れるための重要なファクターとなっており、フルーツを挟んだものなど、見た目に華やかなマリトッツォもさまざまに登場しているが、プリンチの一見地味な、パン生地へのこだわりはさすが、本場の貫禄を感じさせる。
また生クリームの中身にも仕掛けがある。現在販売されているのは「ノッチョーラ」と「ランポーネ&フラーゴラ」の2つの味わい。前者はヘーゼルナッツ、後者はストロベリーとラズベリーのソースを詰めている。イタリアのスイーツでは定番のフレーバーだそうで、プリンチではやはり食感で特徴を出した。
「ジャムのように固めずに、ソースの状態で注入しています。食べてみるまでソースがどこに入っているか分からないので、突然味わいが口の中に広がって、驚きが感じられます」(松田氏)
イタリアの食文化を朝、昼、晩とさまざまなシーンで伝えていきたいとするプリンチでは、パンだけでなく、デザートや「アペリティーボ」と呼ばれるお酒に合わせる軽食なども提供。アペリティーボは夕方早い時間、いわゆるカクテルアワーを楽しむイタリアの習慣で、コロナ前には代官山店を中心に広がり始めていたそうだ。緑に囲まれた代官山T-SITEの景観も雰囲気を盛り上げてくれるだろう。
コロナ禍の今は家で過ごす時間も充実させてほしいという思いから、持ち帰りにも力を入れる。多種多様のイタリアンハムやチーズなども量り売りしているのもその一環。「コメッサ」という接客係と、食材について会話する人も多いそうだ。
松田氏は今後もイタリア文化に基づくパンやお菓子を紹介していきたいとのこと。例えば日本でもじわじわと普及しているイースターだが、祝い方やイースターにちなむ料理はあまり知られていない。イースターに食べるお菓子なども、マリトッツォに続く商品として模索しているようだ。
このように、イタリアの本物の味と文化を伝えてくれるプリンチとマリトッツォ。海外旅行などいつのことか、という現在の状況だが、せめてひとときの非日常を味わってみてはいかがだろうか。
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