(第32回)【変わる人事編】2010年卒採用の異変。求人倍率1.62なのに最悪の就職内定率

●採用PR業界も青息吐息。2011年卒採用でも厳しさは続く

 この記事が掲載されて間もなく2011年卒大学求人倍率が発表されるだろう。どういう数字になるのか興味深いが、いくつか気になることがある。2010年卒の就職率は9割を切りそうであり、今春卒業予定だった学生のうち4万5000人が未就職者のままになる。そこで「就職留年」制度を設けて救済措置を講ずる大学が増大している。私立大学に多い。たぶん制度を設けなくても運用で認める大学も多いはずだ。

 ただし1留で就職できるとは限らない。2011年卒採用は2010年卒並みに厳しいと思われるからだ。これまでの2011年採用予定に関する調査を見ると「前年並み」が例年どおりに多いのだが、額面どおりに受け取れない。なぜなら就職ナビを見ても、及び腰の姿勢が見えるからだ。

 今年の主要就職ナビを調べてみると、10月30日段階で掲載企業は約5000社、エントリー受付企業は4000社のオーダーである。オープンから1カ月が経過してこの数字は、例年に比べると異様に少ない。これまでこの時期の掲載企業は7000~8000社くらいだったから、3割程度減っている。3月31日段階の掲載企業は6000社から7000社。ただしエントリー受け付けをしない企業はやはり1000社くらいある。

 こういう企業の採用姿勢は採用PR業界に反映する。採用意欲が旺盛だと採用PR業界は元気がいい。採用意欲がしぼんでいると元気がない。そしていま採用PR業界は青息吐息だ。 昨年から大手では希望退職募集、賃金カット、ボーナス全額カットという緊急措置がとられている。また制作実務を担う編集会社では売り上げが数分の1になり、倒産したプロダクションもある。

 採用PR業界はしぶとい業種で、バブル経済崩壊後の1990年代でも倒産した会社はないはずだが、今回はかなり状況が変わってきている。もっともこの10年以内に採用に参入した企業は多く、過当競争になっていたことは否めない。

 日本独特の大学生就職システムは当たり前のように思われてきたが、このシステムを支えてきた企業の採用人事、大学のキャリアセンター、そして採用PR業界のいずれもが構造変化の時を迎えているのかもしれない。

 次回は企業内の教育について考えてみる。他国では小中高の初等、中等教育を経て、大学という高等教育で人材として育てられる。ところが日本は不思議な国で、これまでの大学に人材教育に関する責任はなかった。そして企業が人材教育を担ってきた。このシステムは2000年ごろまでうまく機能していた。ところがこの10年近くは企業が期待するように人が育たなくなった。また育てる方法もよくわからなくなっている。そんな実態を人事はよく知っている。問題は経営者が理解していないことだ。
佃 光博(つくだ・みつひろ)
早稲田大学文学部卒。新聞社、出版社勤務を経て、1981年、(株)文化放送ブレーンに入社。技術系採用メディア「ELAN」創刊、編集長。84年、(株)ピー・イー・シー・インタラクティブ設立。87年、学生援護会より技術系採用メディア「μα(ミューアルファ)」創刊、編集長。89年、学生援護会より転職情報誌『DODA(デューダ)』のネーミング、創刊を手掛ける。多くの採用ツール、ホームページ制作を手掛け、特に理系メディアを得意とする。2010年より、「採用プロ.com」を運営するHRプロ嘱託研究員を兼務。
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