ただし、新卒採用はやや例外であり、直ちに落ち込んだわけではない。2010年卒採用は2008年10月の就職ナビのオープンから始まっており、9月のリーマンショックの影響を織り込む時間はなかった。2008年夏までに決められた採用計画に沿って就職戦線はスタートしていたのだ。ただその後の展開をみると、大きな異変が起きていた。
●意外に良かった2010年卒の大卒求人倍率に安心
2009年卒採用以前は、各社とも採用計画に基づいて行動していた。採用数も計画時にだいたい策定されていた。就職氷河期といわれた時期でも翌年、翌々年を見通すことができたからだ。しかし2010年卒以降は計画を立てることが難しくなった。世界経済が荒波にもまれているときに、2年後の新卒採用数を確定させることは難しい。実際に10年卒採用では企業の動きは鈍り、選考は3月・4月に集中した。また「厳選採用」がより明確、濃厚になったと評価されている。「厳選採用」はこの数年の採用のキーワードだが、「たぶん必要だろう数」から「必ず必要な数」に絞り込むというニュアンスである。つまり、採用計画数に対して未達になろうが、求める質がレベルに達していない学生に妥協してまで、無理に採用することをしないという考え方だ。
ところで、2010年卒採用の採用活動は2008年10月に始まり、選考は2009年3月~4月上旬に集中したが、この段階ではまだ誰も2010年卒採用の求人倍率はわかっていない。
『大卒求人倍率調査』は、2009年4月14日にリクルートワークス研究所から発表された。2010年卒採用は1.62だった。意外にいい数字だった。2000年代前半よりもはるかに良く、2006年卒の1.60よりもいい。
1.62という数字にいちばん安心したのは大学のキャリアセンターではないだろうか。現在の大学では学生を集めるために就職率を重視している。特に私立大学にこの傾向が強く、キャリアセンターへの期待が大きいからだ。
ここで2000年以降の『大卒求人倍率調査』と『大学等卒業者の就職状況調査』の数字を対比させてみよう。0.99と最もひどかった2000年卒でさえ91.9%が就職している。1.60の2006年卒採用の就職率は95.3%だ。また、内定切りが出た2009年卒採用も最終的には95.7%という高い数字だった。さて、はたして2010年卒採用の求人倍率1.62は正しかったのだろうか。
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