地域主権改革の内実、国の責任の希薄化が社会保障を脅かす
昨年8月の衆議院選挙。民主党は「暮らしのための政治」「国民の生活が第一」(鳩山由紀夫首相)をスローガンに掲げ、大勝利を収めた。そして鳩山政権は発足とともに、改革の“1丁目1番地”(最優先事項)に「地域主権改革」を据え、徹底した地方分権を目的とした新たな制度作りに乗り出した。ところが、その内容を知った障害者や保育園関係者が反発を強めている。
当事者の知らぬ間に障害者関連法を“改正”
ここに「地方分権改革推進計画等に関する質問および意見」と題した“申し入れ文書”がある。差出人はDPI(障害者インターナショナル)北海道ブロック会議議長の西村正樹氏。宛先は、北海道8区選出の衆議院議員で、首相補佐官(地域主権改革担当)の逢坂誠二氏だ。自身も身体障害者である西村氏は、障害者自立支援法廃止のための運動を通じて、逢坂氏とは旧知の間柄だった。
同文書が逢坂氏に送られたのは1月22日。そこには逢坂氏らが進めてきた、「地域主権改革」に対する疑念がつづられていた。
「内閣総理大臣を本部長とし、各閣僚で構成される『障がい者制度改革推進本部』が昨年12月に発足し、その下に『障がい者制度改革推進会議』が設置されました。そして推進会議の下、わが国の障害者施策は、障害者権利条約の批准と国内法の整備を基本として、5年間をかけて見直しを進めることが現政権で確認されています。ところが、同じ内閣府において、私たち障害当事者がまったく知らないところで、障害者施策の見直しの方向性が示されていました。そうなった経緯・趣旨・理由についてご説明いただきたい」
真意をただすべく、2月12日、西村氏は総務省内で逢坂氏と面談した。西村氏はその場で、障害者に直接かかわる法律に関して、当事者に何の説明もないままに見直しが進められている理由について尋ねた。しかし、「逢坂氏は、まさにこれから決めていくことで、今は申し上げられないと繰り返すばかりで、きちんとした説明はなかった」(西村氏)。
その後、西村氏には何の連絡もないまま、障害者関連の法改正も含む地域主権改革関連法案が提出され、4月27日に与党3党の賛成多数により、参議院で可決された。