うっかり「建物がずいぶんと立派で頑丈そうですね~」と口走りそうになった。あぶない、あぶない。ゼネコンの研究所なのだから、建物が立派で頑丈なのは当たり前だ。
今日は神奈川県にあるJR東戸塚駅から車で少しのところにある、大成建設の技術センターにお邪魔している。目的の場所は水理実験棟と呼ばれる建物だ。そこでは、海と沿岸を模した水槽で人工的に津波を造り、その影響を把握しようとしていると聞き、どんな仕組みになっているのかを見にきたのである。緑が豊かでほどよい高低差があって風が心地よく、長居したくなる研究所だ。
波を造る、つまり造波するにはいくつか方法があるというのは、大成建設土木技術研究所の水域・環境研究室で海洋水理チームリーダーを務める織田幸伸さんだ。
チャンバー式を採用
波を造る方式のひとつはまず、ピストン式。これは、水中で板を団扇のように動かして波を起こす方法だ。さざなみのような連続的な波を起こすのに向いている。しかし、津波のように周期の長い波を造るのは不得手だ。
次に、ポンプ式。タンクに溜めておいた水を、ポンプ経由で水槽に注ぐ波を立てる。これは、周期の長い波を造るのに適しているが、大きさに難あり。十分に大きな波を造るには、装置が大がかりとなる。あちらが立てばこちらが立たずなのだ。
それからもうひとつが、チャンバー式。水槽の一部に逆さまにした箱を沈め、天井となった底の部分から空気を抜く。すると、箱の中だけ水面が上がる。そうやって箱の中に溜めた水を、ダムが門を開放して放水するように一気に吐き出すことで、大きな波を造るのだ。
大成建設が採用したのも、チャンバー式だ。ただチャンバー式の場合、造る波の形のコントロールが難しい。実際の津波は海底の動きの影響を受けているため、地形によってその形が異なるのだが、チャンバー式で造る波は単調になってしまう。
そこで、逆さまにした箱の底部分に、複数のバルブを取り付けた。門の開放ではなく、これらのバルブで、箱の中の空気の圧力を細かくコントロールすることで、立ち上がりの鋭い波や、ゆっくりじわじわと水面の持ち上がる波を造り出すことに成功した。
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