元技術者の異端シェフが危機で見せた大胆行動

電子部品会社から転身して三つ星獲得の凄腕

レストラン文化の存続が危ぶまれた2020年。ガストロノミーを保護・継承するために、三つ星シェフ・米田肇さんは誰よりも早く立ち上がりました(写真:江藤詩文)
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日本が世界に誇るレストラン文化の存続が危ぶまれた2020年。ガストロノミーを保護・継承するために、三つ星シェフ・米田肇さんは誰よりも早く立ち上がりました。そこにはどんな思いがあったのでしょう。そしてわれわれレストランをこよなく愛するフーディーズは、いま何ができるのでしょうか。

本記事はLEON.JPの提供記事です

大阪・肥後橋から世界に向けてガストロノミーを発信する三つ星料理人・米田肇さん。生命学、生物学、脳科学、消化器学、経営学、建築学、宇宙科学などさまざまな学問に精通し、地球を含めた宇宙を司る“均衡と調和”という秩序の美を、自身の世界観と美意識をベースに、料理を通じて表現しています。

これまでのレストランの概念をはるかに超越した、米田さんが追求する壮大な世界観。また、理工学部出身の元エンジニアという、料理人としては非常に珍しい異色の経歴も相まって、時には「料理界の異端児」などと呼ばれることも。

とりわけシグネチャーディッシュとされる野菜のひと皿「chikyu 地球」は、日本トップのシェフたちでさえ舌を巻くアート。山に雨が降り、川となって大地に栄養をもたらし、海へと還って雲になり、また雨を降らせる。太古の時代から自然が営んできた地球の循環を、大地の恵みである100種類もの野菜と海の恵みである貝類のエキスで表現した作品は、1ミリ以下の単位で完璧に味を構成した、まさに味わえる芸術作品です。

「今年のシェフ賞」を受賞した「ゴ・エ・ミヨ2021」授賞式にて(写真:LEON編集部)

そんな、いわば唯一無二の独自の世界観を探求してきた米田さんが、危機的状況に面して業界を救うべく、行政に補償を求める署名活動を誰よりも早く立ち上げました。飲食業界を支えるために東奔西走する姿は、多くの仲間たちの支えとなり、業界全体への貢献ぶりも称賛されています。アフターコロナに向かってレストランはどうなるのか。私たちレストランラバーは何をすべきなのか。「ゴ・エ・ミヨ2021」で「今年のシェフ賞」に輝いた、トップスターシェフの思いを伺いました。

飲食業界全体を文化として守り、次世代に継承したい

──米田さんは、宇宙の秩序美という広大な世界観を、料理を通じて表現していて、いわばわが道を追求しています。コラボレーションイベントなどもあまり積極的に開催しないですし、独自の道を追求しているイメージでしたので、この事態に面してシェフたちと連携して、その旗手となったのは意外でした。

米田(敬称略、以下同):これまでの日本のガストロノミーは、多くのお客様に支えられ、外国からもたくさんのお客様にいらしていただき、とても恵まれて平和な環境にあったと思います。そんな中では、各店がそれぞれの個性を発揮して、お互いが切磋琢磨しながら、自分らしくクリエイティビティーを追求していくことができました。

けれども、誰もが予想しなかった事態が起こりました。この事態は、個人の店がそれぞれ工夫して頑張れば乗り切れるものではない。そう直感して、業界全体の危機に直面して、なにか自分にできることはないか考えました。というより、やらずにはいられない、動かずにはいられなかったのです。

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