元技術者の異端シェフが危機で見せた大胆行動 電子部品会社から転身して三つ星獲得の凄腕

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──料理人は利他主義者! 私はあちこちで料理人性善説と言っているのですが、米田さんのその論に大賛成です。そんな利他主義のシェフがいるからこそ、レストランは憩いの場にもなっています。これからの外食は、無人(架空)レストランやデリバリーだけが残るという見方もありますが、どう思われますか。

米田:僕は、レストランは人の温かみや絆、つながりを伝える場所であり、古くから多くの文化がレストランを通じて生まれてきました。レストラン文化はなくならないと思うし、守って次の世代に伝えたい。そのために飲食業界における新しい時代に合った働き方はないか、あれこれ挑戦しています。

「HAJIME」の厨房に立つ米田さん。(c)HAJIME All Right Reserved.

アフターコロナに向けて模索する料理人の新しい可能性

──料理人の新しい働き方といえば、米田さんはこの4月、ソニーAIが取り組む「ガストロノミー・フラッグシッププロジェクト」とパートナー契約を結び、アドバイザーとして就任しました。人工知能とレストランという想像もつかない組み合わせが、とても新鮮です。

米田:大手企業のAIといえば、テクノロジー化によって合理性や生産性を追求するものと思われるかもしれませんが、僕がやりたいことは、それとはちょっと違います。僕は料理をつくり、それを食べるというガストロノミーは、生命を育むことであり、また人々の幸せや希望であると考えています。人々の多様性を認めて、多くの人が幸せになり、希望を持つことができる。そのためにAIとロボティクスをどう活用するか。そこに、レストランのシェフであり、エンジニアでもあった僕なりの考えを生かすことができると思います。

単に調理技術を模倣するといったこれまでの範疇を超えて、未来のレストランはどうあるべきか。人々が幸せになる場所という視点から、キッチンのシステムから流通まで、幅広く見直してみたいですね。

──米田さんのレストラン「HAJIME」にも、AIとロボティクスを導入するのですか。

米田:もちろんです。AIは人の仕事を奪う、人間に取って代わると言われることもありますが、人間にしかできないクリエイティブな仕事をする時間を確保するために、AIを利用することもできます。

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